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休憩が15分しか取れなかったです

Q.お昼休憩(1時間)の間にナースコール対応などで休憩が15分しか取れない時があります。働いた分の45分は給料で貰えるのでしょうか。休憩が取れなかった分は定時後に45分休んで帰ってねと言われます。早く帰りたいです。

A.休憩時間に働いた45分は時間外労働として請求できます。休憩時間に働いていたことで労働時間が増えた場合は、使用者は時間外手当を支払わなければなりません。

 ――労基法第34条では、休憩時間の位置について「労働時間の途中に与えなければならない」と定めています。「定時後に休んで帰る」は、休憩時間を与えたことにはなりません。

使用者は、1日の労働時間が6時間を越える場合には45分間、8時間を越えるときには少なくとも1時間を休憩時間として与えなければなりません。休憩時間に働いていた分は、所定時間外労働として賃金を支払う必要があります。また、時間外手当を支払ったことで休憩付与の義務が免除されるわけではなく、労働時間の途中に別途決められた時間分の休憩を与える必要があります。休憩時間を労働の開始直前や、終了後に設けることは認められていません。必要な休憩時間が与えられていない場合は、労基法34条違反6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金で、重い罰則が科せられます。管理者はまず休憩時間を取れるように時間管理を行う必要があります。


12時間夜勤を提案されています

Q.経営者から、「経営改善のため」「2交代夜勤でないと若い人が確保できない」との理由で、12時間夜勤を提案されています。どういう問題点や課題があるのでしょうか。

 A.労働基準法では、第32条で、「1週間の労働時間は40時間」かつ「1日の労働時間は8時間」と定められています。ですから原則として、1日8時間を超える「所定労働時間」はあり得ません。例外的な時間外労働の定めである労使協定(36協定)を行えば、12時間働かせることは可能ですが、シフト勤務にはできません。そのため、1日8時間を超える労働を「所定内」で行うには、労基法32条2項で定められた「変形労働時間制」を導入することが必要になります。

 ――「変形労働時間制」は、隔日勤務(タクシー等)や、ある一定期間(一月)で、繁忙期や閑散期があるような職場で、「1日8時間、週40時間」の規定によらず、平均して週40時間に収まれば、ある日の労働時間を長くしたり、短くしたりできる制度です。しかし、そもそも看護職場のように24時間365日、患者に対応する職場にはふさわしくないものです。それに夜勤自体が身体に負担をかける業務だということも考慮する必要があります。

-以下、詳細説明となります。

頻繁な勤務交代職場では認められない「変形労働時間制」

この「変形労働時間制」を導入する場合には、「変形期間における各日、各週の労働時間を具体的に定める必要があり、『変形期間を平均し40時間の範囲内であっても使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような制度はこれに該当しない』(昭和63.1.1 基発1号、平3.1.1 基発1号、平9.3.25 基発195号)」とされています。また各日、各週の労働時間の定め方については、「就業規則において、できる限り具体的に特定すべきものであるが、業務の実態から月ごとに勤務割を作成する必要がある場合(医療機関のような ※全厚労注)には、就業規則において各直勤務の始業終業時刻、各直勤務の組合せの考え方、勤務割表の作成手続き及びその周知方法等を定めておき、それにしたがって各日ごとの勤務割は、変形期間の開始前までに具体的に特定する」(昭63.3.14 基発150号)とされています。

つまり12時間夜勤などの変形労働時間制を導入するには、具体的な勤務パターンとともに、勤務表作成のルールなどが定めなければいけません。また就業規則が整備されたとしても、確定した勤務表により、各日・各週の所定労働時間と休日が固定されるため、決定後の勤務シフト変更は原則、出来ません。その後に、使用者の都合で勤務時間が変更されるような場合や、突発的な事由により、勤務交代などが頻繁に発生する場合には、そもそも変形労働時間制が認められません。仮に勤務変更となった労働者については、当初のシフト(所定労働時間)を越える勤務として、割増し残業代の対象となり、賃金計算などが、煩雑になる可能性があります。

労働条件は、患者の安全と労働者の健康を第一に考える

日本看護協会は、「夜勤交代制のガイドライン」の中で、基準2「勤務の拘束時間は13 時間以内とする」と提言しています。この「基準2」をもって、12 時間夜勤だとか、12 時間日勤(スーパー日勤やロング日勤)を認めるような看護管理者がいますが、ガイドライン(ブックレット40 ページ)では、「日勤・夜勤の12 時間勤務を推奨しているのではありません。日勤にせよ夜勤にせよ、あくまでも上限値を示したものです。労働基準法の定める労働時間は8 時間ですので、8 時間以上の労働時間は長時間労働であるという認識を持ちましょう」と述べており、あくまでも「8 時間労働」が基本で、残業などがあっても「拘束時間で13 時間を超えないように」ということです。

労働組合としては、「まずは患者の医療安全の確保、それと同時に労働者の健康管理確保の実現のために労働条件を考える」という考え方を基本に置く必要があると思います。

事故発生(安全性)リスクでは、日勤よりも夜勤の際のリスクが高いこと、8時間労働よりも12時間労働のリスクが高いことが研究結果として出ています(図、労働科学研究所・佐々木司さん資料より)。「労働時間はできるだけ短く、夜勤回数は出来るだけ減らす」ことが患者、医療従事者どちらにとってもプラスとなる改善方向です。

(労働科学研究所・佐々木司氏の講演資料より)

いずれにしろ、労働条件の変更には、労働者や労働組合との合意が必要ですし、とりわけ「不利益な」労働条件変更となれば、その必要性や内容についての説明や十分な労使協議が必要であることは、当然です(労働契約法第9条、10条参照)。

 


呼び出し時(オンコール)の労働時間はいつから?

Q.休み中に呼び出し(オンコール)を受けることがあります。その場合、勤務時間はどのように扱いますか? なお、これまで呼び出し時から勤務としてきましたが、ICカードによる勤怠管理に伴い、打刻時からの変更を提案されています。

 A.本来、労働者は労働を提供する義務のない日時にまで、働く必要はありませんが、人員不足で、不測の事態に満足に対応できない医療提供体制の下で、呼び出し(オンコール)勤務が常態化しています。呼び出し勤務の考え方には、いくつかの判例も出されていますが、未だに「個別具体的判断」というグレーゾーンとなっているのが実態です。

 ――「労働時間」の基本的な考え方は、「使用者の指揮命令下にある時間」とされています。労働義務のない時間に、指揮命令によって「時間的」「場所的」に拘束を受けている場合には、労働時間とあたると解されています。

詳細説明はここから。

労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、明示的であっても黙示的であっても、指示があったと見なされる時間は、労働時間です。

現在の法解釈では、呼び出しに備えて自宅待機していても、実際に「呼び出し」がない状態では、労働者は自由な時間の過ごし方が出来ると、見なされてしまっています。(本来、休日として旅行や少し遠出したくても行けないという「不自由」な状態にも関わらずです)。

実際に呼び出しがなされた場合にのみ、その時点から労働時間として算定されることになります。その際の通勤時間については、「労働時間とはいえない」という解釈が優勢のようですが、私たちが行ってきた厚生労働省交渉では、「ケースバイケースで個別具体的な状況で判断される」として、確実に「呼び出し時点から勤務に向かうまでの時間」を「労働時間ではない」と断言している訳でもありません。「呼び出しを受けた時から労働時間にカウントされる」と説明している解説も多数見受けられます。

もちろん、病院・施設内に「待機」させられている状況であれば、それは「使用者の指揮命令下におかれた状況」であり、実際に労働をしていなくても「手待ち時間」であり、労働時間と解されます。

医療機関には宅直勤務というものがありますが、これについて裁判所は、「自宅で待機していて急患などが発生した場合に、病院から呼び出され出勤するというものについては、呼び出しがない限り労働時間には当たらないが、病院内で待機している宿日直については労働時間に含まれる」と判断しました。(奈良県(医師時間外手当)事件 奈良地裁 平21.4.22判決)

労災保険では、緊急呼び出しを受けて出勤する場合の災害時の扱いは、通常の通勤とは異なって、「通勤災害」ではなく、「業務災害」とされます。

緊急呼び出しに応じて出勤することは、その通勤時間も拘束することになり、全くの無給という訳ではなく、通常はその拘束性に対しての対価(例えば呼び出し手当など)を支払うことが妥当との解説が一般的です。また「自宅待機」を命じている場合には、「待機手当」を宿直勤務と同等程度に支給した方が良いと解説しているところもあります。

なお設問のケースに限っていうと、現行の労働条件で、「呼び出し時から労働時間としてカウントしている」ということが労働協約・協定や就業規則上の規定となっていれば、当然のごとく、「労働時間」ですし、それを「不利益に変更したい」となれば、労働契約法8~10条に定められた必要な労働条件変更手続きを経ないで、一方的に変更することはできません。文面としての規定がなくても「慣行」として適用されていたとしても、当然のごとく、使用者と労働者が合意してきた労働条件ですから、新たな合意なしには変更できるものではありません。

 


お昼の休憩時間は1時間ですが、業務が忙しく30分取るのがやっとです。残り30分の扱いはどうなるのでしょうか?

休憩時間に働いた時間は、労働時間であり、使用者はその分、所定時間外労働としての賃金を支払う必要があります。管理者はまず休憩時間を取れるように時間管理を行う必要があります。
――労基法34条では、1日の労働時間が6時間を越える場合には45分間、8時間を越えるときには少なくとも1時間を休憩時間として与えなければなりません。通常は所定労働時間が7時間半でも、残業で8時間を越える可能性が高いことから、常勤では一般的に1時間休憩のところがほとんどです。労基法34条違反は、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金で労基法では重い方の罰則です。


院長から「研修(時間外)を受けなかった者には、罰を与える」と発言がありました。必須とは聞いていなかったのですが、罰を受けることになるの?

「罰を与える」なんてとんでもない話です。

もし「業務命令」違反であれば、なんらかの「懲戒処分」を受ける可能性はありますが、命令(明示)されていない時間外の参加は、労働者の自由であり、罰を受ける理由はありません。

所定労働時間(定時)の勤務は、使用者の指揮命令下にあり、拘束時間ですが、終業後に労働者は解放されます。時間外にも拘束するためには、就業規則に時間外労働の規定と、「36協定」を結んだ上で、「業務命令」を発する事が条件です。今回のケースでは、明示された業務命令もないので、罰を受ける必然性がありません。上司の発言で「参加を強要する」ようなら、パワハラにもなります。


「自己啓発で研修を受けるよう」指示された研修時間は、無給で仕方ないのでしょうか?

もちろん労働時間で賃金は発生します!

使用者に指示され研修を受けたので、「労働時間」であり、使用者は賃金を支払う必要があります。

――電通の高橋まつりさんの過労死を始めとして長時間労働が社会問題となり、厚労省は2017年1月に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を発出しました。このガイドラインでは、「使用者には労働時間を適正に把握する責務があること」を明確にし、業務上義務とされている研修等も労働時間とするように規定しています。

「ガイドライン」では、具体的に労働時間について
1. 使用者の明示的・黙示的な指示により労働者が業務を行う時間は労働時間に当たります。
2. 労働時間に該当するか否かは、労働契約や就業規則などの定めによって決められるものではなく、客観的に見て、労働者の行為が使用者から義務づけられたものといえるか否か等によって判断されます。
3. たとえば、次のような時間は、労働時間に該当します。
① 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間
② 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)
③ 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間

と明確に「労働時間」として扱うよう記載しています。


請求していないのに勝手に年休が入っているけどいいんですか?

年休取得は、個人の希望が原則です。

年次有給休暇を使用者が一方的に指定することはできません(労働基準法第39条4項)。年次有給休暇の5日取得義務については、すでに5日以上請求・取得している労働者に対しては、使用者による時季指定をする必要はなく、またすることもできません。(労働基準法第39条8項)

――2019年4月から「働き方改革法」の施行で、年5日の年休を労働者に取得させることが使用者の義務となりました(労働基準法第39条7項)。取得義務化の対象者は、法定の年次有給休暇付与日数が10日以上の全ての労働者になります。
労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に、使用者は「労働者自らの請求」と、あらかじめ労使協定を締結することにより使用者が有給休暇を指定できる「計画年休(ただし有給休暇の付与日数から5日間を除いた日数に限る)」、及び「使用者による時季指定」のいずれかの方法で、年次有給休暇を5日取得させる必要があります。時季指定をするに当たっては、使用者は労働者の意見を聴取し、その意見を尊重するよう努めなければならず、一方的に勤務表に組み込むことはできません。義務化の対象となる労働者に有給休暇を年間で5日間取得させなかった場合は、使用者は罰則(労働者一人につき、30万円以下の罰金)の対象となります(労基法第120条)。
年次有給休暇は、労働者の「心身のリフレッシュを図ること」を目的としています。まずは自分の取りたい時季に取得していきましょう。勤務調整が難しい時は、職場で休暇取得計画(カレンダー)の作成を提案し、促進していきましょう。


経営が悪いと労働条件が悪くなるのは仕方ないのでしょうか?

そんなことはありません!

労働者の労働条件に関わる法律上の基本原則として、効力の強い順から
日本国憲法(第27条、28条・労働基本権)
 ↓
法律(労働基準法、労働安全衛生法、労働組合法など)
 ↓
労働協約(使用者と労働組合との合意文書)
 ↓
就業規則(事業所毎に策定される職場のルール)
 ↓
労働契約(個々の労働者が行う使用者との契約)
 ↓
業務命令(日々、上司より出される業務指示など)
となっています。
ですから、個々の労働者が使用者と合意して、就業規則より低い労働条件で労働契約を行ったとしても、その部分は無効になります。事業所毎に作成されている「就業規則」が、労働条件のベースになりますので、一人ひとりの労働者がしっかりとその中身を知ることがまずは大切です。

労働契約の基本原則 労働契約の締結や変更は、以下の原則に基づいて行うことが必要です(労働契約法第3条)
(1)労使の対等の立場によること
(2)就業の実態に応じて、均衡を考慮すること
(3)仕事と生活の調和に配慮すること
(4)信義に従い誠実に行動しなければならず、権利を濫用してはならないこと

不利益変更の禁止原則
○労働基準法第1条の2 「・・(中略)・・労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない」とされており、労働条件の「不利益変更」は、労働基準法に関して「違法」ということになります。

労働条件を変更するには
1.就業規則の変更によらず、労働条件を勝手に不利益とするのはもちろん違法です。
2.就業規則を変更しても、使用者が一方的に「不利益変更」することはできません(労働契約法第9条)。
3.労働条件を変更する場合には、就業規則の変更、もしくは労使協定(労働協約の場合は、原則、組合員にのみ適用)が必要になります。
4.労働条件を「不利益変更」する場合には、変更するための「合理性」が求められます。少なくとも労働条件変更の「合理性」の視点としては、次のことが必要です(労働契約法第10条)

① その変更が、以下の事情などに照らして合理的であること。
 ・労働者の受ける不利益の程度
 ・労働条件の変更の必要性
 ・変更後の就業規則の内容の相当性
 ・労働組合等との交渉の状況
② 労働者に変更後の就業規則を周知させること。
 まず、そもそも労働条件を不利益変更しなければならない必要性があるのかどうか、使用者が具体的な情報や根拠を提示して説明する必要があり、条件変更によって労働者が受ける不利益の妥当性や許容性も検討されなければなりません。
 これら全てに合理的な根拠が必要であり、労働組合との丁寧かつ十分な協議を行い、納得できる状況までにあることがベストです。また労働者への周知を進めることは当然、使用者の責任になります。
 また就業規則の変更届け出には、過半数労働組合か、それがなければ労働者の過半数代表の意見書添付が必要です。反対意見があっても変更なく届け出ることは可能ですが、労働契約法10条の手続きを充たしているかは問題となりますので、納得できるまで労働組合での交渉を行い、安易な合意をしないことが大切です。


産前産後休暇中は無給となっている職場なのでかわりに年次有給休暇を申請した

× すでに労働の義務が免除されているので年次有給休暇は取得できません

産前産後休暇中の賃金は労使の取り決めにより有給にすることができることは2月号でお伝えしましたが、まだ広まっていないのが実情です。
年次有給休暇(年休)を使って少しでも賃金をもらえればと考えがちですが、産前産後休暇は「就業させることはできない」とすでに労働の義務が免除されていますので、年休を取得することはできません。行政通達でも「会社に対して全く労働の義務が免除されることとなる場合において、休職発令された者が年休を請求したときは、労働義務がない日について年休を取得する余地がないことから、これらの休職者は年休請求権の行使ができないと解する(基発1456号)」とされています。
労使交渉で有給に変える取り組みが重要になっています。


産前・産後休暇中は働いていないので無給にしなくてはならない

× 労使の取り決めにより有給にすることができます。

労働基準法では産前・産後休暇中の賃金の規定はなく、労使の取り決めにゆだねられています。
就業規則や労働協約など、労使の取り決めが無く、賃金が支払われていなかった場合でも、健康保険に入っていれば健康保険法102条の規定により産前6週間(多胎妊娠の場合14週間)、産後8週間について標準報酬日額の3分の2が出産手当金として支給されます。また、産休は有給休暇日数の算定にあたっては出勤とみなされます。(労働基準法39条7項)
ただし、国民健康保険は出産手当金が支払われません。また、出産を前に退職した場合は健康保険であっても支給されないので注意が必要です。