徳厚労が力を入れている「56歳以上の一時金改善」の背景

(全厚労ニュース2023年新年号より続く)
最後に徳厚労が一番力を入れていることを尋ねると、56歳以上の一時金だと話があった。
広島は60歳までの職員も同じ扱いなのでその内容を聞いて驚いた。56歳以上から一時金は、2015年まで56歳で90%支給に始まり、57歳(80%)、58歳(70%)、59歳(30%)、60歳(30%)と漸減される体系になっていた。いつからなのかと詳しく聞くと、定年が55歳だったころ、60歳まで定年延長をする際に起こったことだと説明してくれた。当時は完全週休2日を目指し交渉を行っていた時代で定年が55歳だったため、年金も早めに支給されていた。年金受給が60歳まで延びることが分かり、労組はいち早く定年延長の要求を出し、協議するように求めていたが、労組との合意がないまま農林年金の受給開始年齢変更に追随し定年延長となった。同時にいつの間にか一時金支給率も決まっていたそうだ。

農協連労組から独立し、厚生連単独労組へ
なぜこの時労組は何も対応しなかったのか疑問に思い深掘りすると、この一時金支給率についてはカラクリがあり、役職がついている人は100%支給されるというのだ。更に当時はJA5連での合同協議であったらしく、厚生連以外の組織はほぼ事務職であり、厚生連でもそうだが事務職のほとんどは56歳までには役職になっていることが多いため、JA職員の多くは困らないと推測できる。当時は定年まで働き続ける人も少なく、労組役員年齢層も若く(30代)年金受給まで働けて、一時金が出るだけありがたいと感じるのでは、という事からあまり問題視されなかったようだ。しかし厚生連職員の多くは役職にならない。不満に思っていても5連での協議になれば言いにくい状況だったに違いない。そこで徳厚労は農協連労組より独立する取り組みを行い、1981年8月には独立に成功したが、一時金や賃金についての交渉は5連共通役員制で、単独で協議できるのは労働条件や医療関係の手当のみと限定されていた。2000年になってようやく厚生連と徳厚労で直接賃金交渉が行えるようになったそうだ。執行部メンバーも代替わりし、一時金支給率については、昔からそうなのだから、これが当たり前だと思っていたそうだ。しかし2015年の定期大会で阿南支部の元主任が問題を提起し、交渉が始まった。まずは支給率が低すぎる59歳以上のところに力を入れて交渉することを決めたそうだ。交渉の結果16年には59歳以上の職員に対し10万円(夏期5万円・年末5万)の上乗せを勝ち取り、18年には15万円(夏期5万・年末10万)の上乗せをさせた。20年には30%の支給から40%の支給に改善させ、2021年には年末だけだったが5万円上乗せさせた。22年には59歳の職員に対し40%支給から50%支給に、60歳職員は40%支給から45%支給に改善させた。継続して交渉しているため、徐々にではあるが成果が出ている。執行部メンバーは自分たちがその年代に到達するまでには改善したいと頑張っている。今回の取材を通して、自分の県では当たり前だと思っていたことがそうではなかったという事を強く感じた。

みんなの団結で強い労働組合へ
組合活動は一人ではできない。みんなが団結し交渉することで強い力を発揮する。県外の状況を知れば自県の当たり前が当たり前ではないことを知る。長い道のりではあるが、交渉し続けることで少しずつ改善していく。自分のために、自分達のためにどうしたらより良い労働環境・賃金が手に入るのか、一人ひとりが考え意見を出し合うことで少しずつ進んでいける。労働組合は働く人々の強い支えであり、権利である。労働組合は経営側と交渉できる窓口である。すべての組織が強い労働組合であってほしいと私は願う!
取材 高本 奉彦(広厚労)