シン・ホスピタル 始動!静岡中伊豆温泉病院&岐阜・西濃厚生病院

  2024年新年号では、医療・社会保障を取り巻く目まぐるしい変化の中、施設老朽化や地域医療再編に対応し、地域医療を守り発展させようと、シン・ホスピタル(新病院)を始動している県を取り上げようと企画しました。23年12月開院の静岡・中伊豆温泉病院と10月開院の岐阜・西濃厚生病院を紹介します。

広々とした敷地に機能を一体化  静岡・中伊豆温泉病院

  JA静岡厚生連中伊豆温泉病院は1967(昭和42)年に旧中伊豆町に開院してから56年に渡って、地域の健康に寄与してきました。そして2023(令和5)年12月1日、伊豆市下白岩に新築移転となりました。新病院のコンセプトは「地域密着型病院+静岡県東部地区の健康管理とリハビリテーションの拠点病院」です。

周辺に田園風景が広がる中伊豆温泉病院

  病床数228床(一般・手術病棟55床、回復期リハビリテーション病棟118床、地域包括ケア病棟55床)、内科・外科・整形外科・リウマチ科・リハビリテーション科・泌尿器科・脳神経外科・皮膚科・眼科の診療科目があります。
  また健康管理センターは中伊豆の田園風景が一望できるラウンジや温泉浴場、女性健診用のレディースエリアを備えています。
  当院はリハビリテーションに力を入れており、80人以上のリハビリ専門職が在籍しています。天然温泉を使用した水中運動療法や広大な理学療法室、自宅環境に近い状態で訓練ができる作業療法室、個別対応の可能な言語聴覚療法室を備えています。

広々としたリハビリ庭園
水中運動療法用のプール

患者さん・職員にも優しい病院へ

  旧病院では待合室の椅子が足りずに、患者さんを立ってお待たせすることもありましたが、新病院は開放感のあるエントランス、待合スペースによって、外来患者さんが余裕をもって座ることができるようになりました。
  また旧病院では建物面積が限られていたので、訪問看護ステーションや保育所は別棟にありました。駐車場も坂の下で、雨の日は移動しづらかったです。限られた面積の中に通所リハビリや外来リハビリを設けてありましたし、外来診察室からレントゲン室までの移動も長く、これらの移動にはいったん外通路を通らなくてはなりませんでした。不便なだけでなく、雨や風の日は危険を伴いました。
  しかし新病院では全てが一つの棟に入りましたので、屋根続きで移動できることは病院利用者にとっても職員にとってもうれしいことです。訪問看護ステーションが同じ建物内に入ったことで、入院から退院、在宅のサービス移行において情報共有しやすくなりました。リハビリや看護、介護の職員としては、様々な領域の医療・介護の経験を積むことができるので、人材育成にもつながると思います。また職員駐車場は病院のすぐ横にあり、病院建物内に広い保育所も入ったので、職員にとって働きやすい環境になったと思います。
新病院へ移転する前は、仕事の動線が複雑になるのではないかとか、職員の目が届かない場所が増えるのではないかといった不安もありました。しかし、実際に新病院に来てみて、「一つの建物」というハード面を整えることで働きやすくなることを実感しています。
  毎日の事なので、掃除しやすい素材であるとか、清潔と不潔のエリアを分けやすくなったとか、新しい病院を建設するにあたって職員の意見が取り入れられたことも実感します。

十和田石を使った病棟の温泉風呂
伊豆市産のヒノキを使った内装

  病院内のイベントコーナーの壁保護材には伊豆市産のヒノキが使われていたり、院内の大浴場には十和田石が使われていたりして、温かさを感じます。これからも地域の皆さんに愛される病院でありたいと思います。(静厚労 二之宮篤子)

 

地域の医療ニーズに応える病院目指して 岐阜・西濃厚生病院

  JA岐阜厚生連は、2023(令和5)年10月1日に新病院として「西濃厚生病院」を開院しました。この度、新病院の開院に至った経緯等をご紹介させていただきます。
  岐阜県は、医療及び介護の総合的な確保を推進するため、16(平成28)年7月に岐阜県地域医療構想を策定しています。これは、病床規模の適正化や経営基盤の効率化を目指すものとして、医療提供体制の見直しが示されたものです。岐阜県は5つの圏域で構成されており、その全ての圏域にて病床が過剰と示され、その病床数の合計は3,322床でありました。今回の新病院の開院は、西濃圏域における地域医療構想への対応となります。
  西濃圏域には、JA岐阜厚生連の病院が2つ「揖斐厚生病院」「西美濃厚生病院」がありました。両院共通の課題として、「人口減少に伴う利用者数の減少」「医師確保の困難」「耐震基準を満たしていない」「施設設備の老朽化」があったため、将来に渡り地域医療を継続して安定的に提供できる体制の構築を目指し「地域完結型医療の提供」を掲げて取り組み、病床機能の見直し及び適正な病床数について病床再編が検討されていました。
  そのようななか、19(令和元)年9月に厚生労働省は、診療実績が乏しく再編・統合の議論が必要と判断した公立・公的医療機関を公表。岐阜県内の9病院が名指しされ、その中には病床再編の検討をしていた西美濃厚生病院が対象となっていました。また17(平成29)年3月に揖斐厚生病院は大規模建造物の耐震診断の結果として、震度6以上の地震で倒壊の危険性ありと指摘を受けており、これらは、地域住民の不安を大きく煽るものであり、早急な取り組みを求められました。

上空から見た西濃厚生病院

  これらの課題を踏まえ、今後も両病院の医療機能を維持したまま運営を継続することは難しく、地域医療を守るためには、2つの病院の病床を再編する必要があると判断し、施設設備の老朽化が著しく耐震化が困難な揖斐厚生病院は廃院し、立地を移転し「西濃厚生病院」として病院名を変更し移転新築することになりました。病床再編として、西美濃厚生病院の急性期機能を「西濃厚生病院」に集約化し、病床数は400床でその内訳は、急性期293床、回復期・地域包括82床の他、西濃圏域初の緩和ケア病床25床を開設するなど地域医療の充実を図りました。また西美濃厚生病院は、回復期機能に特化した病院へと転換されました。
  西濃厚生病院は、新型コロナ対応の知見を活かした新興感染症対応が可能な外来・病床の施設・設備を整備し、昨今の異常気象による豪雨や洪水時にも病院機能が維持できるよう災害に強い病院として建築されています。西濃圏域で2番目の災害拠点病院として認定され、災害時の医療提供に必要なライフラインの確保やヘリポート施設の整備、災害派遣医療チームの体制を有しています。

最新の放射線治療装置も装備
ゆったりとした病棟サロン

  診療機能においては、高度先端医療の推進を目指して、手術支援ロボット「ダヴィンチ」をはじめPET-CT装置、放射線治療装置などの医療機器を導入し、がん治療に重点をおいた体制を整備しました。回復期機能としては、従前の地域包括ケア病棟に加え、回復期リハビリテーション病棟を開設し、同じフロアにリハビリテーション訓練室を配備し、効率的かつ効果的にリハビリテーションが出来る環境を整備しました。
  病床再編後の揖斐厚生病院は廃院しますが、耐震建物を地元行政(揖斐川町)が後利用し、診療所等を開設します。新病院から医師を派遣して診療を支援し、充分な連携を行うこととしています。
  JA岐阜厚生連は、国・県の推進する地域医療構想の方針に沿って病床再編に積極的に取り組み「地域医療を継続して安定的に提供すべき」と考えています。現在、東濃圏域においても東濃厚生病院と土岐市立総合病院の一病院化を計画しており、26(令和8)年2月に開院予定として造成工事を行っています。
農山村地域の医療提供を目的として設立された組織を継承して開設されたという経緯を鑑み、地域のために、地域の方々と対話を深め、地域に必要とされる医療を継続的・安定的に提供するため、労働組合員、職員が一丸となり取り組む所存であります。関係機関各位のご理解ご協力に対し感謝申し上げ、今後とも一層のご支援をお願いいたします。(岐厚労・岡村秀人)