11月5日 秋の厚労省交渉 人員確保・増員には財源が必要

zoomでの交渉、現場の実態・要求を訴えました

11月5日、全厚労は第2回中執と合わせて、厚労省交渉を完全zoom形式で実施。前回6月とほぼ同じ要求でしたが、具体的な説明文書も補強しながら、財政支援や診療報酬による抜本的な改善・規制が必要なことを強く訴えました。

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国からの「医療・介護従事者支援」を形に

最初に、「改めて医療・介護従事者への『慰労金』を差別なく一律支給して欲しい」という要求を掲げて交渉。20年度の慰労金が様々な条件により、5~20万の差別支給だったことや都道府県でも取り扱いに違いがあり、手続きの混乱や現場の分断をもたらしたとして、「今もコロナ対応・非対応に関わらず、感染対策等で緊張を強いられ、ストレスが溜まりっぱなし。一般社会と違って、旅行や会食なども制限されている。医療従事者であるが故の差別や偏見も続いており、仕事を辞めるかのギリギリの状態で働いている。国として医療・介護を支えるという姿勢を『慰労金』という形ででも、しっかりと表して欲しい」と訴えました。一方、コロナ対応者への処遇については、「国としてコロナ『特別手当』を最低保障し、国費として財源を保障すること」を求めました。
厚労省は、「昨年は未知のウイルス対策として現場の苦労に応えたもので、今後は考えていない」、「手当などの賃金・労働条件は、各々の経営判断や労使関係で決定されるもので、国として定めるつもりはない」としましたが、「医療現場への支援は重要と考えており、岸田総理の指示の下、経済対策(※)が策定され、それを踏まえた補正予算も大詰めを迎えているところ」だとしました。

※報道では、看護師の賃上げは、救急病院の看護師約20万人の限定とされました。対象が狭すぎるという批判を受け、救急とコロナ対応の看護師を対象との変更がありましたが、月額4千円という金額も対象も極めて狭いものとなっています。

最低7対1基準で入院基本料大幅引き上げを

診療報酬について、厚労省は「各保険医療機関が提供する運用機能において、看護職員の適正な配置に対して評価を行っている」と従来通りの回答でした。
高本中執(広島)は、「患者の7~8割が高齢者で、認知症患者も増え、夜間徘徊や点滴を抜いたり、通常業務ですら2倍3倍も手のかかる状況になっている。現場としては最低でも7対1が必要で、加算ではなく最低基準として考えてほしい」と訴えました。
畠中執(秋田)からは「健全な経営が確保できるよう設定していると言われたが、実際に厚生連は、中山間地やへき地での医療事業をやっていて、医業収益で黒字を確保できるような状況にはない。2%上げても赤字、3%上げてやっとトントンという程度で、どうやって健全経営をやれるのか」と主張しました。
厚労省は「中医協でいままさに議論をしているところで、お答えできる状況にない。皆さん方のご意見・ご要望を踏まえて、中医協で議論していきたい」と答えるに留まりました。
岩本委員長は、「診療報酬改善してもらうべく、今日の要請を行っている。中医協のメンバーには、労働者側委員が非常に乏しいので、我々現場労働者が名前を連ねることができるよう検討してもらいたい」と強く要請しました。

賃金・労働条件を診療報酬で保障せよ

「診療報酬による労働条件規制」の要求について、厚労省の回答は前回6月とほぼ同じでした。
下保中執(北海道)は、「医療では患者さんは時間を選ばず、やってくる。休みは人の余裕がないと取れない。それだけの人員を雇える診療報酬にして欲しい」と訴えました。
中村副委員長(秋田)は、「努力義務だけでは規制は達成できない。罰則があって経営者も真剣になる。労働者の負担軽減を本気で考えるのであれば、そこをしっかり議論して欲しい」と迫りました。
岡部中執(神奈川)は「インターバル規制と年休取得を重点に進めれば、変則的な夜勤交替制勤務はかなり改善されると思う。診療報酬体系に盛り込むと同時に、具体的な指導を強めるべきだ」と指摘しました。
厚労省からは、「働き方改革では、特にインターバル規制や深夜労働の回数設定を定めた。導入のマニュアルや周知事例、中小企業への助成、働き方改革支援センター等での相談、支援を進めている」との説明がなされましたが、診療報酬上の規制についてのコメントはありませんでした。
最後に岩本委員長から、「私たちの要求は、地域医療を守るためには働く人を増やして欲しい、という一点に尽きる。そのためにも労働環境や賃金を改善することが必要で、診療報酬に反映させて欲しいということ。ぜひそこを理解して欲しい」と訴えて、2時間余りの交渉を終えました。(全厚労ニュース21年11月号より)