確認しよう!賃金(給与)明細(下)

賃金明細の見方(下)では、賃金からの「控除部分」を説明します。賃金から引かれる健康保険料や雇用保険料は、年度途中で料率・金額が変わることもあります。控除されているお金が何に使われているかも関心を寄せてみましょう。

控除内容を説明する前に「標準報酬月額」について説明します。

【標準報酬月額】

  標準報酬月額とは、社会保険料(健保・年金)計算を簡便化するために設けられたもので、健康保険で50等級(厚生年金で32等級、1等級の幅は収入に応じて1万~3万円程度)に分かれています。2年目の看護師さんは、24万円(23~25万円の範囲)で、健保19等級(年金16等級)にあたります。通常は、毎年4~6月の3ヶ月の賃金平均額を元に等級が決められ(定時決定)、その年の9月から来年8月まで適用されます。この計算には通勤費や残業代も含まれるため、通勤費が高い人はより多く社会保険料を納めることにもなります(もちろん将来の年金額には反映します)。

  4月入職の新人は、資格取得時の決定として、4月の賃金(基本給+諸手当)を元に標準報酬月額を定め、8月まで適用されます。

○健康保険料

  健康保険料は、各自の標準報酬月額に基づいて徴収されます。労使折半が基本ですが、健康保険組合の規定や労使協定により事業主負担が多い場合もあります。料率は入っている健保組合によって違い、農業団体では東京都農林漁業団体健康保険組合(東農健保)や各県の農業健保などがあります。一般的な中小企業は「協会けんぽ」に入り、各県毎に料率が違っています。

○介護保険料

  40歳以上65歳未満の労働者(第2号被保険者)から、健康保険料と一緒に徴収されます。料率は加入している健保組合によって違います。例では、2例とも40歳未満なので介護保険料は徴収されていません。

○厚生年金

  厚生年金は老後の年金を受けるためのものです。保険料は、事業主と折半で、標準報酬月額を元に決められます。保険料率は2023年現在、18.3%です。年金法改正で、04年度から17年度まで、毎年0.354%(労使折半)引き上げられてきました。

○雇用保険

  雇用保険はもしも突然、失業した場合などに失業給付を受けられるようにした制度です。現在の料率は、一般事業の労働者では総支給額×0.6%、1円未満は切り捨てられます。前回賃金特集を行った6年前は0.3%でしたので、コロナ禍を経て倍近くに引き上げられました。

○所得税

  所得税は、支給額からこれまでの「社会保険料」などを控除したものが課税対象です。通勤費は、15万円まで非課税扱いとなり、控除できます。「課税対象額」に対して、賃金から天引き(源泉徴収)する金額が段階的に定められており、扶養人数(所得税の場合、16歳未満の子は含みません)に応じて税額は少なくなります。詳しくはネットで「源泉徴収税額表」を検索すると確認できます。

○住民税

  住民税は、前年度(前年1~12月)の所得を元に、自治体から6月より徴収されます。新社会人は、前年の所得がないので掛かりませんが、2年目の6月から住民税を支払うことになります。そのため6月号の「賃金明細の見方(上)」ではなかった住民税が、2年目・看護師の6月賃金明細で登場しています。

税金の使われ方・社会保障にも関心を持とう

  以上、簡単に税・社会保険料の控除を見てきました。皆さんも賃金明細を見て、控除額が合っているか確認してみましょう。これらは否が応でも賃金から引かれます。例でみても税・社会保険料等は、総支給額の17~23%にもなります。また国民所得に占める税金や社会保障負担では、23年度で46.8%になると推計されています。税金の使い方や年金などの社会保障制度のあり方にも関心が及ぶのではないでしょうか。