「賃上げ」評価の24診療報酬改定もしっかり活かして  さらに物価高に負けない大幅賃上げ確保を目指そう

24年度の診療報酬改定では、これまで行われた改定とは違って、実施時期が2カ月延ばされて6月実施となったことの他、「賃上げ」を目的とした報酬改定が組み込まれたことは、かつてない大きな変化に上げられます。診療報酬という「公定価格」に縛られた医療機関では、この内容によって収益や「働き方」への影響も出てきます。今号では当面分かっている範囲になりますが、「ベースアップ評価料」を中心に説明します。

2月14日、中央社会保険医療協議会(中医協)は、24年度の診療報酬改定案を答申しました。正式には3月上旬に改定内容が告示される予定になっています。今回改定の目玉とされるのが、「医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取り組み」として、「賃上げに向けた評価の新設」を行ったことです。

その具体的な仕組みとして、提示されている内容(以下、外来等を行っている医療機関について)には、

 

①初診料、再診料・外来診療料の引き上げ

若手の勤務医(40歳未満)や事務職員の賃上げに必要な財源を配分。

②外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)

外来・在宅医療を実施する医療機関(医科)において、勤務する看護職員、薬剤師その他医療関係職種の賃金改善をしている場合の評価の新設

③入院ベースアップ評価料

病院・有床診療所に勤務する看護職員、薬剤師その他の賃金改善を実施している場合の評価

対象職員(囲み参照)の賃上げ2.3%分(②で算定される分を除く)に見合う165段階の評価

これらの点数の積み上げで、最終的には「入院ベースアップ評価料」の算定によって、職員の賃上げに必要な金額を措置するというのが政府の説明です。

入院ベースアップ評価料を算定するためには、施設基準(概要。一部標記は改変)として、

(1)入院基本料、特定保険料又は短期滞在手術等基本料(短期滞在手術等基本料1を除く)の届出を行っている医療機関。

(2)主として医療に従事する職員(医師・歯科医師を除く、以下、対象職員)が勤務している。

(3)外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)か歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の届出を行っている。

(4)上記の評価料により算定される点数の見込みの10倍が、対象職員の給与総額の2.3%未満。

(5)入院ベースアップ評価料の点数は、見込みの数字を当てはめ、次の式により算出した【B】に基づいて、該当区分(1点~165点)を届け出ること。

(6)(5)の「対象職員の給与総額」は、直近12か月の1月あたりの平均の数値を使用。延べ入院患者数は、直近3か月の1月あたりの平均の数値。また毎年3、6、9、12月に上記算定式で新たに算出し、区分の変更があれば、届け出る。但し前回届け出時点と比較して、直近3か月の【B】、対象職員の給与総額、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)等の点数の見込み、延べ入院患者数のいずれの変化も1割以内の場合は、区分変更を行わない。

(7)当該評価料を算定する場合には、令和6年度及び令和7年度において対象職員の賃金(役員報酬を除く)の改善(定期昇給によるものを除く)を実施しなければならない。ただし、令和6年度において、翌年度の賃金の改善のために繰越を行う場合においてはこの限りではない。

(8)(7)について、基本給、手当、賞与等のうち対象とする賃金項目を特定した上で行い、基本給又は決まって毎月支払われる手当の引上げにより改善を図ることを原則とする。

(9)令和6年度及び令和7年度における当該保険医療機関に勤務する職員の賃金の改善に係る計画を作成していること。

(10)前号の計画に基づく職員の賃金の改善に係る状況について、定期的に地方厚生局長等に報告すること。

(11)主として保険診療等から収入を得る保険医療機関であること。

(波線、編集部)

 22年秋に実施された「看護職員処遇改善評価料」は、対象医療機関や対象職種が限られたものでしたが、今回の賃上げ措置はほとんどの保険医療機関が対象となり、対象職種も医療機関に勤務する職員と拡げられています。

(7)にあるとおり、この評価料は「定期昇給」ではない賃上げを実施すること、原則として、「基本給又は決まって毎月支払われる手当の引き上げ」が必要です。「手当」でも可とされている点はありますが、「ベースアップ評価料」という訳ですから、「基本給の引き上げ=ベースアップ」で対応するのが、当然だと思います。

また令和6年度の賃上げ分を令和7年度分に繰越可能という規定も盛り込まれており、この取扱いを含めて、まだまだ詳細は不明なところがあります。当然、今回の診療報酬による引き上げ分だけでは、これまでの諸物価の高騰や他産業との賃金格差是正にも追いつくものではありません。経営者に対しては、報酬改定分の賃上げはしっかりと行わせつつ、職場実態や現場の賃金要求に見合う大幅賃上げを目指していきましょう。