新型コロナ・重症者以外の自宅療養方針に抗議・撤回を求めました

全厚労は8月6日、政府(内閣総理大臣・厚生労働大臣)に対して、新型コロナ患者の療養方針を「重症者以外、基本、自宅療養」とした方針転換に対して、以下の「抗議・撤回」の要請を行いました。

内閣総理大臣 菅 義偉 殿
厚生労働大臣 田村憲久 殿

2021年8月6日
全国厚生連労働組合連合会
中央執行委員長 岩本 一宏

新型コロナ感染者の療養方針転換への抗議と撤回を求める

新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な実態となるなか、総理は8月2日、「重症患者や重症化リスクの特に高い方」の入院を確保しつつ、「それ以外の方は自宅での療養を基本と」する方針を発表しました。これまでの療養方針の抜本的な改悪であり、「住民のいのちと健康を守る」ことを使命としている医療従事者にとって看過できません。
政府の「治療の手引き」では、中等症Ⅰで「入院の上で慎重に観察」、中等症Ⅱに至っては、「高度な医療を行える施設への転院を検討」すべきもので、たとえ軽症であっても「リスク因子のある患者は入院とする」とされています。この重症度分類を根底から覆す判断の変更が、専門家の意見も聞かずに行われたことは、極めて重大な問題です。
政府が対策の一つとしている「抗体カクテル療法」も、軽症~中等症段階で使用して初めて効果を表すとされており、転換方針では使用の機会がほとんど得られませんし、軽症であっても急変する事例が多数報告されています。「自宅療養」は治療でもなんでもなく単なる「放置」です。訪問診療・看護の拡充も打ち出していますが、それこそマンパワーも追加の感染対策等も必要とされる机上の空論です。
東京では自宅療養者と入院・療養等調整中者が合わせて2万数千人にも上り、ただでさえ医療アクセスが出来ない人々が増えています。自宅療養は、家族内感染のリスクも高めることになり、コロナ収束にとってもマイナスにしかなりません。
総理は、野党はもちろん、与党からも「方針撤回」要求を受けたにも関わらず、当初は聞き入れようともしませんでした。ところが8月5日には突如、中等症までを入院対象とする「修正案」を出してきました。政府の政策決定過程がいかにいい加減なものかと感じざるを得ません。
もし今回の政策決定が、病床確保対策や医療従事者不足に起因するのであれば、政府が打ち出すべきは、これまでの医療費抑制、病床削減の縮小方針を改め、平時から余裕を持った病床確保や処遇改善を中心にした医療従事者の拡充方針です。とりわけ感染症病床を担ってきた公立公的医療機関の再編統合や病床削減を進める地域医療構想の撤回と、真に地域に必要な医療提供体制を確保するための自治体・住民・医療機関等による民主的な計画づくりと国の支援です。
全厚労は、いのちをないがしろにする、この治療方針転換に対して、厳重に抗議し、撤回を要求します。そして何よりも国民のいのちと健康を守るために、政府として、患者対応のための医療提供体制の大幅な拡充、人員体制確保への財政支援、感染収束に向けて国民や事業者への協力を求めるための強力な支援と明確なメッセージをセットに打ち出すことを強く要求します。

以上

添付ファイル  全厚労・新型コロナ感染者の療養方針転換への抗議と撤回を求める要請.pdf