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写真上から1:「解決方向の提案」での鈴木土身運営委員、2:ポイント学習での岡部義秀運営委員、3:医療研集会恒例高木理光運営委員のリラックスタイム、4:基調講演での岡田知弘教授、5:分科会の様子①、6:
◆ 2017.11.22

第34回医療研究集会in土浦


しのびよる医療の危機

『赤字宣伝』なんかに負けないぞ

 11月17~19日に、全厚労第34回医療研究集会が茨城県土浦市で開催され、全国から136名が参加しました。今集会では、基調報告を「プロローグ」、「ポイント学習」、「ウェルカム報告」の3本立てで行いました。
 プロローグでは「全厚労医療研究集会の34年間の果たしてきた役割」が安本真理子運営委員長より報告されました。医療研運動の歴史を踏まえ、今集会のテーマを「しのびよる医療の危機『赤字宣伝』なんかに負けないぞ」に設定した背景が、今全国で起こっている厚生連の解散や、病院売却などであること。私たちが何をすればよいのか、果たすべき役割は何かを問題提起されました。
 ポイント学習では、岡部義秀運営委員から、「石西、栃木、埼玉厚生連の解散と人件費削減・『合理化』―『赤字宣伝』に労働組合はどう立ち向かうべきか―」と題し、過去に解散した厚生連の、解散までの人件費削減や、合理化などのデータを基に学習を行いました。これまでの厚生連の解散や合理化に至った「負の教訓」を全県で共有する事が重要であると参加者に訴えました。
 ウェルカム報告では、茨厚労美野輪智博執行委員長より、「茨厚労2016秋闘の闘いを振り返る」とのテーマで、昨年末の一時金超低額回答を跳ね返した茨厚労の闘いを紹介。団体交渉やストを行い、繰り返し何度も訴え続けることの意義を再確認するものであったとともに、「地域医療を守りたい」との思いから、地域に出た活動で運動を広げた事が転換点となった事などを報告しました。
 また、基調講演後には、鈴木土身運営委員から「住民の運動に学び、ともに参加しよう」と、解決方向の提案が示され、全国で医療に関する住民運動が広がっている事を報告。その背景には、社会保障の改悪等があり、根本原因である国の医療政策を変えていく事が求められていると訴えました。
 2日目からは4つの分科会に別れ、第1「医療労働者と住民のかかわり」、第2「本来の仕事がしたい」、第3「住民と協同する病院運営」、第4「厚生連病院の果たすべき役割」のテーマで開催。第1・第2分科会には、それぞれ助言者として、長友薫輝教授(三重短期大学)、横山壽一教授(仏教大学)にご参加いただきました。分科会インタビューは全厚労ニュース第453号3面に記載されておりますので是非御参照下さい。

地域に暮らす一人ひとりが輝くために
 基調講演は、京都大学の岡田知弘教授に、「医療を国民の手に取り戻すために」のテーマで、多様な角度から地域経済と医療の関わりについてお話いただきました。一部ですが抜粋して紹介します。
労働組合としてアベノミクスを見る
 表1をみると安倍政権発足時より3倍のベースマネーを流したことが分かりますが、物価は動いていません。むしろ99.1%で減っているのです。さらに金融・保険除く法人の人件費は101で止まっています。代わりに増えているのが国債残高です。国の借金が増えています。そして株価も増え、内部留保はほぼ2倍です。どんどん経営者は利益を上げ、格差が広がっています。これを世界から(US$ベースで)見ると、日本はどうなっているのか(表2)。2012~2014の間にGDPが22.7%も減ってしまいました。他の国は低いレベルでありますがGDPを増加させています。なぜこんな事が起こるか。日本は国際競争に打ち勝つために労働者の賃金を安くし、派遣に切り替える政策で利益を拡大しようとしたのです。各国の雇用者報酬の推移(表3)は、国の労働者全体として受け取る報酬を表しています。95年を100とすると、2013年には92.4%で100を割り込んでいます。外国の失業率は日本より高いです。しかし、賃金はちゃんと支払われています。しかも安定雇用も多い。日本政府の誤った政策が日本の経済を圧縮し、皆さんの賃金を押し下げている最大の要因ですよ。こういう政策、大本のところを切り替えていく事を職場闘争と合わせて行っていく事が大事です。

大企業優先政治がもたらす東京への利益集中
 どの自治体も1960年から大きな公共事業と企業誘致、リゾート開発などで発展を期待してきましたが、地域の格差は広がる一方です。なぜなのか。簡単です。大規模公共事業を受注する企業は、東京に本社のあるゼネコンなのです。誘致した企業の多くも東京に本社があります。そこで上げた利益は東京に移転されていきます。都道府県別に地域経済を見ると、東京の第1次産業はほぼ0%、第2次産業は約10%、そして第3次産業の皆さん方の医療も含めたところで約20%です。これをはるかに超えるのが法人所得の比率約50%です。この利益はどこから来るのか、1つは海外の企業、もう1つは東京に本社のある地方の工場、支店、営業所です。地域に立派な建物やハイテク工場が出来たとしても地域の活性化とは言えません。そこに住む一人ひとりの生活が向上するかどうかが本当の活性化なのです。
 地域発展には「地域内再投資力」の形成が必要です。地域で経済主体(企業、農家、協同組合、地方自治体等)が再投資を繰り返すことで、仕事と所得が生まれ生活が維持拡大されます。その機能に重要な役割を果たすのが病院です。病院は経済主体としては極めて大きく、京都や大阪では、業種別の人口を見ると病院で働く人達と取引する関連企業も含めれば最も多いのです。「地域内再投資力」の強化には、多国籍企業だけの利益を考えているような政治を変換していく事がどうしても必要です。しかし、それが変わったからといって地域の暮らしが良くなる保障はどこにもありません。地域で暮らす一人ひとりが良くなるためには、労働組合同士だけではなく、地域の経済団体、中小企業や自治体関係者と一緒になった運動をしなければなりません。(文責・編集部





     
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