役員強化セミナー実践企画では、1日目に職場の悩みや実現したい要求についてグループで話し合い要求書を作りました。2日目に作成した要求書をもとに模擬団交を行いました。コロナ禍でもできる平和の取り組みとしてスタートした全厚労ピースウェーブは、今年で3年目となりました。
参加者の要求をまとめて
各グループには教宣部がアドバイザーとして入り、自身の経験を紹介しながら、それぞれの病院・職場で実際に困っていることや悩みを話し合いました。
グループは「労働組合 第○支部」として参加者の中から支部長・書記長を決め、話し合った内容を一枚の要求書にまとめました。
第1〜6支部から出された要求は、夜勤協定の遵守、職員駐車場の無償化、転勤制度の明確化、看護師・リハビリスタッフの増員など多岐に渡りました。なかでも年次有給休暇の取得向上に関する要求は3つの支部要求書に入っていました。
1日目の終わりに、各支部長がくじを引き、明日の模擬団交の交渉順を決めました。

本気の姿勢が交渉のカギ
2日目は団体交渉に入る前に、全厚労四役が経営側、教宣部が組合側で、「うまくない団体交渉」の例を寸劇で紹介。台本を読み違えるなどのハプニングもありましたが、団体交渉では経営側の組合活動を制限するような発言(不当労働行為)を許さず、組合が職場をどうしたいのか具体性をもった要求で交渉を行うことの大切さが伝わりました。
模擬団交トップバッターは、第1支部。冒頭に、支部長から「私たちはいち厚生連職員として、患者・利用者さん、地域住民の方々の人権が守られ、誰もが安心して暮らせる地域社会をつくっていくことが使命。支えていく職員が人間らしく働ける職場をめざして労使協調で取り組んでいきたい」と発言。模擬であっても、本番さながらの挨拶にピリッと場が引き締まりました。
現場の声を伝える
第1支部は「看護研究手当の新設」を要求。忙しい業務の中で毎年回ってくる看護研究が負担という声がスタッフから上がっていること、自己研鑽であれば強制力をなくし、それでもやって欲しいなら手当を、と看護師の組合員が訴えました。
経営側は「プロとして、自己研鑽で。患者さんのために頑張ってほしい」と返しましたが、組合側も「自己研鑽なら、やりたい気持ちがないのにも関わらず、やらせるのはおかしい。手当をつけて貰えたら、やりがいもあるし、やる気も出ると思う。看護研究をしたいと思う気持ちはスタッフの中にもあると思う。今は出来ない人もいるので、希望でいいのでは」と続け、経営側からの「やりたい人だけで頑張ってください」という言葉を引き出しました。すかさず、強制では無いことを確認し、次の要求項目へ移りました。


前進回答もう一歩
交渉後の岩本執行委員長の講評では、支部長の冒頭のあいさつが真剣な姿勢を伝えた、また支部長・書記長だけでなく後ろに座る現場の職員からも発言があると経営側にはとても圧力となり、職員みんなの要求なんだと感じる。手当の新設を要求する時は○万円など具体的な金額を書いた方が良かった、その場では看護研究を強制しないと言っても現場では違うこともあるので必ず確認書を取り交わすことの重要性が話されました。
模擬団交を終えた第1支部に直撃すると、本来の要求は看護研究への手当ではなく「強制力をなくす」で、1日目の第2講義で学んだ「大きい要求から小さい要求へ」の交渉術を実践したとのことでした。「確認書までは気づかず、あと一歩でした」と、支部の仲間と奮闘をたたえ合っていました。
経験を職場に持ち帰って
第6支部では、要求書の前文にある「文書をもって誠意ある回答を」の通り、経営側から書面での回答が出ていないことを指摘。「要求すべてを受け付けることができないので、要求書を書き直して下さい」といった経営側の態度にも、不誠実団交(団交拒否)だと態度を改めさせました。
3つの支部から要求のあった「年休取得の向上」には、経営側の「年次有給休暇はこちらで制限できない事なので、ぜひ取ってください」「職場の中で相談して勤務を調整してもらって…」の回答が続き、第4支部では組合で今後、年休の調査を行い、経営側にも管理者への指導を徹底するよう求めました。年休取得向上には、粘り強い人員増の要求を続けることが必要だと分かりました。
まとめでは、岩本執行委員長から「経営側として伝えないといけない事は伝えましたが組合側の気持ちも分かるので、そちら側に座りたいと思っていました。職場に帰っても団体交渉に興味をもって、支部など行ける範囲で参加し、現場の実態を伝えてほしい」と話されました。

