与党過半数割れで、姿勢に変化も 24秋・厚労省交渉

賃上げ・処遇改善へ向け、現場から積極提案
11月5日、全厚労は秋闘での厚労省交渉を中執他23名の参加で行いました。直近の総選挙で与党が過半数割れを起こしたばかりの状況で、政府の対応が今度どのように進むのかは不確かなところはありますが、医療・介護現場の実態改善はまさに「喫緊の課題」との厚労省側の真剣な受け止めを感じる雰囲気がありました。要求が実現するまで、「声を上げ続けること」の重要性も感じられる交渉になりました。(要請書の内容はこちらから)

要請を真摯に受け止める姿勢が見られた(厚労省右手前)

今回の要請の柱は、24年度診療報酬改定で新設された「ベースアップ評価料」が、ほとんど「ベア」実施に至らず、かつ不十分なこと。また多くの医療機関・施設が、光熱費増・物価高等の影響を受けて厳しい経営状況にあるなかで、大幅賃上げには「国費による支援」と、ベア評価料の制度改善を含めた臨時報酬改定(引き上げ)が必要なことを要求しました。
また中央執行委員の中でも、リハビリ職が増える中で、初めて「リハビリ職の処遇改善」も新たに取り上げました。その他、診療報酬制度による「働き方改革」の推進や医療DXへの対応、診療報酬制度の抜本的改革、病院薬剤師の確保などの要求についてもやり取りしました。

命まもる資格職としてのベースアップを
厚労省は「賃上げは喫緊の課題」とするものの、今回の「ベア評価料」について、医療機関の申請数や、具体的な賃上げ額のデータはまとめていないと回答しました(各地方厚生局では把握していると説明)。
要請団は、「ベア実施は少なく、手当での対応がほとんど。民間企業の賃上げと比べても立ち後れている」、「赤字経営が続き、年末一時金での調整も囁かれている。年収ベースでの引き下げになれば元も子もない。補正予算含め財政支援や臨時報酬改定を実施すべき」と主張しました。
厚労省は、「ベア評価料を措置するにあたって、他の項目を下げてはならないと規定に定めておりご理解頂きたい。しかし、経営自体苦しいため業績に比例しての一時金の可能性も否定は出来ず、その点はしっかり把握していきたい」としました。
秋田からは、「県の最賃は全国最低だが、それでも1日8時間、月20日働けば、月収15万円弱。看護師初任給19万と4万程しか違わない。資格を持って人の命を守る職業の賃金がその程度でしかない。もっと医療職の賃金ベースを上げる報酬にして欲しい」と要請しました。

リハビリ職への評価をもっと上げて
新たな「リハビリ職への処遇改善」に関しては、現場から「若いリハビリ職は働く意欲に燃えているが賃金がネックになり、離職している」、「在宅復帰に向け、農作業が出来るように専門性を持ってリハビリに取り組んでいる。きちんと評価をしてもらいたい」などと訴えました。
厚労省は、「質の高いリハビリを提供するため、関係職種の方々の果たす役割は大変重要と考える。診療報酬改定では、急性期でのリハビリ・栄養・口腔連携体制加算の新設などを行った。今後も現場のご意見を踏まえて、入念な議論とともに中医協での検討を進めたい」としました。

声を出し続けることが変わること
交渉後に行った総括会議では、「以前より耳を傾けるようになったのでは」との感想も。与党過半数割れという政治的緊張も影響しているようで、全厚労からの具体的な提案に対して、頷くような対応をする担当官も見られたのが今回の交渉の特徴だったかと思います。
岩本委員長は、「若手官僚に今訴えていることが、彼らが主要なポストに就き始める5年後くらいに実を結ぶことになる。しっかりと要求し続けていくことが遠く思えて、一番の近道だ」と行動のまとめを行いました。

新厚労定期大会 困難な時こそ、団結を固めて
10月18日、第73回新厚労定期大会が新潟市の県自治労会館で開催され、来賓として参加してきました。

決意表明する新執行部の皆さん

JA新潟厚生連は赤字の拡大により、来年度にも資本が枯渇しかねないと、先日の会見での様子が報道され、全国にも伝わっています。会からは修正事業計画が提案され、役員報酬や医療再編推進等を含めた改革方針が示されました。今後、一時金など処遇減額の影響が考えられる中で、現場に働く職員の日々の過酷さが、代議員の大会発言でも多く訴えられました。
新潟厚生連は、県内では県立病院と並ぶ規模・病床数を持ち、多くの職員数を抱え、地域医療を支えています。新厚労の組合員はもちろん、職員の賃金・労働条件改善なしには人員確保はおろか、離職の歯止めも効かなくなる事態が危惧されています。なんとか現状を打開し、医療・介護の運営を継続するために、「やれることは何でもやろう」という決意を役員・代議員ともに確認した大会でした。
多くの困難はあるものの、和田執行委員長の「団結ガンバロー!」で新年度体制の士気を高め合いました。(全厚労 花澤直樹 記)