新春座談会   4人の委員長が語るこれまでの到達と25春闘への決意

つながりを深く強く、大幅賃上げと組合拡大へ!

座談会出席者

進藤  侑(秋厚労中央執行委員長)

宇留野正志(茨厚労中央執行委員長)

岡野 元保(三厚労中央執行委員長)

由比 智一(高厚労執行委員長)

岩本 一宏(コーディネーター・全厚労中央執行委員長)

 

岩本)みなさん、新年おめでとうございます。

 24春闘では全ての組織でベースアップ評価料を活用した賃上げを獲得したものの、24秋闘での年末一時金が前年割れになったところもあり、25春闘は厳しい闘いが予測されています。この厳しい情勢を乗り越えていくには、まずは24春闘の教訓や反省点を踏まえ、25春闘にそれを全て活かしていくことが必要かと思います。政府目標とされている2%以上のベアを勝ち取るために、どういう闘いを皆んなでやっていくのか。たまには西日本から、話を聞いていきたいと思います。

高知・ベア2・5%にこだわり9月末決着・6月遡及

由比)話題のベアですが、高知は当初、基本給を上げることへの希望はあまり高くはなかったんです。自分が入職する前からベアがされてなかった状態が続いて、誰も経験したことがない。こういう状態で、ベア獲得へどういうふうに切り込んでいくのか非常に悩ましい状況でした。高知は比較的2、30代が多くて、ずっと不況で育ってきた世代なんです。その時に、徳島と広島がベアを確約させたっていうのを聞きました。

 そこで高知でもと思い、春闘でベア要求しましたが、案の定、やっぱり手当支給というのが最初の回答でした。でも高知の賃金は全国的に見ても低いし、執行部でやっぱりベアで取りたいという声が上がり、書記長の堀野くんが中心となって、色々4役で考えてくれました。厚労省のベア評価料の説明を、みんなで読んで勉強して、やっぱり引っかかったのは「基本給または毎月支払われる手当」というところでした。会はそこをずっと手当で押してきました。しかし何度読んでも、賃金表があるところは基本給の賃金表を書き換えるということで上げなければならないと、いうことしか読み取れないので絶対に何が何でもベアを取るという意気込みで、団交も開いてきました。

 高知の組合員というのは、全従業員約400人余りから言ったら、過半数にも満たない90人余りなので、組合活動に対して冷ややかっていうか、あまり乗り気ではない。これまでも団交しても全く来ないとか、来ても数人っていう感じの団交でしたが、今回この賃金交渉で30人ぐらいが集まってくれて、関心が高くなっていました。

 ベア評価料の財源を会は9000円の手当としてきたんですが、労働組合的には従業員の平均賃金を約25万と仮定して、それの2・5%というので、6600円で要求しました。時間は掛かりましたが、なんとか会もそれでいいんじゃないかな、と。ただこれは基本給でも、本給ではなくて退職金に反映しない加給という形での実現でした。また決定は9月末でしたが、10月給与で6月給与と夏季賞与含めて遡及させたことも粘り強くベアにこだわった結果だと思います。25年春闘では、本給に組み込めるように頑張っていきたいと思います。

岩本)高知の機関紙「お知らせ」が非常に役立ったと聞いています。このお知らせを配ったときの組合員とか、他の職員の皆さんの反応はいかがだったんでしょうか。

由比)やっぱりありがたいという言葉はかけていただきました。賃金だけでなくて、こと細かに機関紙を出したり、あとSNSに機関紙をアップしたりして、どんな活動をしているかというのを周知するように心がけて組織拡大につなげていくように、今頑張っているところです。青年部は花見やBBQなど活発にイベントを行ったり、SNS発信もものすごく行っていて、組合が活性化していくことを目指しています。

岩本)次は丁寧な労使協議会等を通じて、この春闘を乗り切った三重の岡野さんよろしくお願いいたします。

 

三重・正規にも非正規職員にも喜ばれる成果へ

岡野)この春闘ですが、4点について要求しています。

 1つ目は賃上げの要求、2つ目が夏期一時金、3つ目が定期昇給の確認、4つ目が特別手当の4点です。その中で、この春各県からもベア出たよという話を聞いていて、三重でもベアをということを本部側に要求はしていたのですが、結果的には、ベア相当分を手当で支給するというような回答がありました。

 手当回答で、皆さんがっかりしていたところはあったのですが、その代わりに4番の特別手当の要求の方を強めてきました。物価高騰に対する特別手当を要求し、正職員に特別慰労手当及び生活支援手当として10万円プラス5万円を、3月7日の労使定期協議会で回答されました。

 僕の考えなんですが、同じ病院で働いて同じ仕事をしている人が、金額が違うのがおかしいなと思いながらいたのですが、今回は一律正職に関しては15万円、パートタイマーに5万円の支給が出たというところでこの辺は良いことかなと思っています。

岩本)ありがとうございます。三重の方も、組合員への周知とか団結のあり方とか、そういったところに対して非常にご苦労があると思っていますが、何かあれば、教えて下さい。

岡野)三重は8支部があり、中央執行委員会には最大33名の役員が参加し、それぞれの意見を取りまとめていくというのがすごく難しいです。しかし書記長ともう一人中心になってくれる人が以前からいて、彼らが僕の助けをしてくれたり、中心になってやってもらっている感じです。

 また看護集会や新人研修会であるとか、去年からそういう行事も復活させて、今年度も旗開きを兼ねた懇親会を執行委員、各支部長らを呼んで3年ぶりに開催を予定しています。そういう中で、労組の団結を高めていきたいと考えています。

岩本)では、ストライキを構えてしっかりと経営者から労働条件を引き出していくスタ

イルを取っている茨城から、よろしくお願いいたします。

 

茨城・30分ストライキ実施春闘の意義伝える

宇留野)茨城では、まず何を勝ち取るかというところで、働き続けられる職場づくりを、ものすごく大きくテーマに掲げています。

 これは団交の場でも最初の挨拶などで必ず言っています。経営者に向けてとともに、団交に参加してくれている職員の方にもお伝えするという意味でも「働き続けられる職場づくり」を目指して今回の団体交渉をやっていきましょう、とかの話をしています。その中で今回、大きな3つの獲得がありました。

 1つ目がベア評価料。3月26日に24春闘の第1回団交がありましたが、その時は、知識が深まっていない状態というか、国の指針がはっきりしないところがあったので、一旦は持ち帰りという形になりました。ただ要求としてはやはりベア実施を強調しました。経営者はベアではなく手当、その理由としてはいつ切られるかわからない。確かにその意見も一理あるけれど、そうではなく、やはり基本給に乗せないと職員が働き続けられないぞ、というところを強く訴えました。ベア自体は20年以上やってなくて、私も経験してなくて、執行委員の中でも経験したのは1人いるかいないか、というところでした。なので、どうしてもベア獲得は必須の思いでした。

 6月7日の夏季一時金の大きな団交を前にして、5月31日にストライキを行いました。このストというのは、30分間ですが、全職員に何でストを今やっているのか、このベア評価料が、労働組合の運動や国への働きかけによって診療報酬に盛り込まれたんだということを伝えつつ、手当ではなくてベアでもらうことの方がメリットが大きい、と伝える意味でも行いました。

 その後の団交ではベアに対して決着はつきませんでした。最初100円(+手当6900円)と言われたんです。実は20年前に100円ベアがあって、今回は前の資料を見て、そこから出したのかぐらいの受け止めで、ちょっと職員の中でバカにしてるじゃねえかと、こんな経営者おかしいだろうって結構大きな反響になりました。ある意味、職員に火をつけてくれたかなっていう風に、自分の中でポジティブに捉えました。

 そこから、「だったらいくらならいけるんだろう」と、いろんな人と話しているうちに、いや4桁は当たり前だよね。100円じゃ何も買えないですよね、うまい棒しか買えないなんていう話で、1000円以上は当然ですよねって、次の団交の中ではそれ以上を求めました。そうしたら考え直すというような会からの話があり、実際にその後出されたのは400円(+手当6600円)でした。この金額はその後も7月と9月の団交で、数字が動くことがなく、そうこうしているうちに組合員の声がだんだん薄くなっていってしまった。

 これは、もうちょっと早いスピードでもっともっと進めればよかったなと、結構自分の中では反省しています。スピード感を持って本当に今の直面しているものにどんどん交渉していく、というのが大事なんだな、というのを改めて感じました。ただ400円と言えど、ベアできたことは大きなもので、時間外や一時金にも反映する。退職金には反映しない第2基本給ですが、時間外はみんな絶対やってるから、それをちゃんと請求してください。そうすれば手元に来るお金自体は上がるよっていうのを、逆に宣伝して時間外をしっかりと取ろうというキャンペーンにもつながったかな、と考えています。

 もう一つが、夏の一時金でベアを頑張れば頑張るほど、そっちにお金を取られたら一時金もらえなくなっちゃうんじゃないか、という意見も多数ありました。そこはやはり、勉強を皆さんにしてもらうというよりは、こっちから伝えることが大事、ベア評価料というのは国からのもので、基本的には会側から出すものではないんだよと。それから茨城の場合は、4000万の持ち出しがあるんですが、たかが4000万ですというふうにみんなに言いました。茨城県厚生連は、6病院に看護学校があって、年間では600億円の収入を得て、その中で内部留保も45 %あるんだよっていうところを大きく伝えて、出せないわけはない。取れる財源はあることと、生活給は絶対守りましょう、ということをみんなに伝えてきました。実際、一時金に関しては大きく揉めることはなく、夏は2・0か月という形になりました。

 あともう一つ、大きな課題が23年12月から提案されている「なめがた地域医療センター」の機能縮小問題です。21年の時に縮小案が出され、実際に縮小があったものの、協定書をしっかりと取りこれ以上縮小することはない。現状維持、もしくは病棟をまた作ってということで労使協定を取りました。その協定を破棄するというような提案があって、労組から協定破棄は労使関係の悪化にもつながる、大きな問題になってしまうということを伝えつつ、交渉している最中です。合わせて署名活動をやっていますが、なめがた地域医療センターは、自分の病院だって思っている方がすごく多くて、相当多くの署名をもらっています。職員が働き続けられるためには、お金だけではなくて、本当に諸要求というのが大事だな、と思っていて、今も奮闘しています。

岩本)ありがとうございました。茨城は地域に出て医療を守る運動をしているところも非常に参考になります。次に翌年度も含めてこの春闘の中でベア言及して、しっかりとベア評価料部分を勝ち取った秋田から、よろしくお願いいたします。

秋田・24年ぶりのベア「都市伝説」扱いだった

進藤)秋田では、まず今回24年ぶりのベアということで、私も就職はしてないのですが、それ以来です。以前からいろんな要求を出してきましたが、その中でずっとベースアップ、ベアという言葉はずっと出し続けていたんですけれども、財源がない中で難しいと返されてきました。ただ診療報酬の改定があれば考え得るとの理事長の言葉で「私はベアを諦めていない」と、ベア評価料の話が出てきて、ベアへの期待が持てるようになってきました。

 私は23年秋に執行委員長になりまして、初めて全厚労の集会に出させていただきました。それが1年前の12月拡大会議で、他県の役員の話を聞いて、特に西日本の方々の勢いだったり、秋田頑張れよ、と発破をかけていただいて、それをまず秋田の方に持って帰りました。今回も春闘でベアがなければいつできるんだと、あとは他の県からもストライキ構えてでも取るつもりでいくと、そういう共通の認識でやっていくというのを、秋田の中央執行委員の方にも話をして、春闘ではベアを取りに行くということになりました。

 ただ3月18日の第1回団交では、まだベア評価料部分が不確定だったところもあったので、基本給を引き上げるかとか、そういうことに関しては2回目で交渉したいという話がありました。またその時は、年度末手当は出せないという中だったので、秋厚労としてはベア確約がなければこの闘争は収束できないということを会側には伝えていました。

 2回目の団交が4月に行われて、団交の前の中央闘争委員会の中でも、これで決まらなかったらどうしようとか、どういうふうに進んでいくだろうかとやっぱり不安の声のほうが大きかったんですけれども、交渉の結果、ベアとして6000円を引き出すことができました。本当は一気にワッと喜ぶのかなと思ったんですけれども、あまりにもベア自体が都市伝説みたいな感じで、交渉が終わってしばらく経ってからだんだんと実感が湧いてきたっていう感じでした。

 団交の中で、さらに理事長から来年も幾何かのベアを考えているという意見もいただけたので、今回の春闘に関しては成功だったのかなと思います。ただ執行部としてはどこの財源で出ているのかとか、何年かぶりだとか、そういうのがピンときていない組合員さんもいたので、そこの周知が必要だった。とちょっと反省点かな、と思います。

岩本)ありがとうございます。秋田といえば非常に広範囲に多くの支部が存在していると思うんですが、そこでのご苦労とか、情報共有の方法とかがあれば教えていただきたいなと思います。

進藤)秋田は北から南まで9病院があるんですけど、執行委員会には県北の方からだと3時間くらいかかって、帰りも雪道でなかなか大変です。現執行部は割と年齢層も若いですし、青年部上がりの人たちも多いので、昔からの顔見知りだったりとか、そういうので一回とかでもつながっているので、情報共有しやすいですね。

 それから最近の青年部の行動力が半端ないなと。いろんな研修会にも出てくれていますし、そういう方々が若い人たちを団交にも連れてきてくれているので、面積は広いんですけれども、つながりが拡がってきているのかなと思います。なので、青年層に関しては出し惜しみなく支援したいなと思っています。

岩本)青年が労働組合の繋がり強化や行動力になっているという話は、将来展望が開けてきますね。全厚労でも国会や政府、全厚連に対する働きかけを頑張っていきたいと思っていますが、皆さん方からも、25春闘に向けての意気込みを一言ずつお願いします。

由比) 25春闘はやはり、さらにベア獲得に弾みをつけて、恒久的なベアにつなげられるように議員とか国会にも働きかけていくよう努めていきたいと思います。

岡野)まだ春闘に関しての話は出ていないんですが、個人的な思いとしては、年度末で昨年並みの15万円を何とか確保したいと思っています。またパートさんにも5万円支給をぜひ勝ち取りたいなと思っています。

宇留野)意気込みというところでは、多くの職員にしゃべってもらって、愚痴をいっぱい出して、それが多くの人の愚痴であれば要求が生まれ、改善すれば働き続けられる職場になると。これを念頭にいろんな人としゃべっていきたい、自分も愚痴を言いつつ、口も足も使っていこうと思っています。

進藤)まずは秋闘がまだ続いているので、それの継続交渉と春闘に関しては来年度のベア、あとは働き続けられる職場作りのためには労使で情報共有しながら共闘という形で闘っていきたいと思います、

岩本) 25年は巳年ということで、ヘビのように、粘り強く、そして皆さんの元に賃上げ、労働条件向上を届けてまいりたいと思いますので、今年もどうぞよろしくお願いいたします。