自分を大切にすることからエンパワーメントへ・第45回女性集会in下呂温泉

6月6日〜7日、岐阜県下呂温泉で第45回女性集会を10県42名で開催しました。
集会では「知って守ろう女性の身体、女性の権利〜移り変わるライフステージを軽やかに乗り切ろう〜」と題し、四季レディースクリニック院長の江夏亜希子先生に女性の権利と健康、また月経のしくみや現代女性特有の病気についてお話しいただきました。一部を紹介します。

女性の権利なかった時代

私は、「勉強ができたから頑張れば医者になれたはず」だけど、女の子だからダメと言われたおばあちゃんの影響を強く受け医師になることを目指しました。
祖母が生きた時代…、皆さんは「私と小鳥と鈴と」などの詩で有名な金子みすゞさんをご存知でしょうか。彼女は、夫に遊郭でもらってきた淋病をうつされ、詩人として有名になっていくことを妬まれて詩を書くことも禁じられました。女の子を一人授かった後は子供を産むことができず体調を崩し、彼女は離婚をしたかったのですが、当時女性は離婚をしたら親権がもらえず「この男に娘を育てさせたら、ろくなことにならないので、うちの両親に育てさせてください」という遺書を残し26歳で自殺されました。戦前、女性の権利は全くなく自分の財産を持てず、選挙権や子どもの教育権もありませんでした。戦争が終わって日本国憲法ができ、女性が自分で考えて自分で選んでいい時代になったのです。

我慢するのが女性ではない

産婦人科は、検診に来ない、ワクチンもあるのに打たないなど予防医学が立ち遅れています。私が今思っている最大のミッションは、女性のエンパワーメントです。妊娠出産や生理があって辛い思いをしている「弱者」ではなく、権限を与えられた社会の一員として、決定権をしっかり持って、自発的に目標を達成しようとすること。痛みや苦痛があれば自分で取り除いて、自分の人生を、自分で選択していくことが大事だと思っています。

ホルモン療法も積極的に

生理痛でクリニックに来られた患者さんが「痛いけどこのぐらいは我慢できます」と話されました。私が「痛いのは痛いんだから我慢しなくていいんだよ」と言ったところ、後からその患者さんに「自分はとるに足らない、痛いことは我慢しなきゃいけない存在だと思っていたけど『我慢しなくて良い』と言われて、大事な存在だと言ってもらえたみたいで嬉しかった」と仰って頂いたことがあります。あなたは痛みなんか我慢しなくていいし、力がちゃんとあると伝え続けるのがすごく大事なことだと思っています。

健康のバロメーターに

つい最近まで女性アスリートは、生理があるとコーチから叱られました。生理が止まるまで頑張れみたいなこと言われて、選手本人も「生理が来ない方が楽」みたいに思っていて、病院に行って相談しても「それだけ練習を追い込んでいたら止まりますよね」みたいな感じで誰も問題視していなかった。ただ、ここ20年ぐらいでようやく注目されるようになってきました。運動をし続けると栄養が足りず生理が止まって、女性ホルモンが出なくなると骨を丈夫にする細胞が減り、骨がもろくなって疲労骨折を起こしてしまう。男女ともに栄養不足でいいことは一つもありません。逆に言えば生理が毎月来ることは栄養が足りているサインになります。
生理が止まる目安は、BMIにあります。日本人女性の平均身長158㎝で55㎏がBMI 22で平均となります。若い女性はこれを「太っている」と思う方が多いですが、国立スポーツ科学センターがとったデータではBMI 17.5を下回ると生理が止まってしまうと出ています。BMIが18を切ってくるのはアスリートに限らず避けた方が良いです。また、生理が毎月来れば元気かというと、生理痛があったり量が多かったり、年齢が上がれば更年期があり、アスリートだから一般女性だからと区別せずに話をしています。

現代は内膜症リスク高

若い時に生理痛が強かった人は子宮内膜症になるリスクが2.6倍と言われています。生理痛がある方は将来の子宮内膜症予備軍と思って早めに受診された方がいいです。
現在は初経が早く、初産年齢が高い、また生涯出産回数が少ないため現代女性は生理の回数が多く子宮内膜症のリスクが高くなっています(図参照)。ピルやホルモン補充療法など年齢に合わせて、上手に使っていかれたらいいかなと思います。

子宮内膜症のリスク

子宮頸がんワクチンは副反応の懸念があり「積極的な勧奨」が停止となりましたが、現在コロナワクチンと相対してリスクが変わらないということで22年から3年間キャッチアップ接種ができるようになっています。今、海外では男性も公費接種している国が増えていて、東京都でも今年4月から男の子も無料で受けられるようになっています。男性の接種は子宮頸がんを減らすことに貢献するだけでなく、咽頭癌や肛門癌の原因を減らすこともあり推奨されています。ワクチンで、もし副反応が出た場合は保障制度もあります。
婦人科で下着を脱いで検査受けることに抵抗感がある方もおられると思いますが、お子さんであればちゃんとリスクを説明し、検査を受ける権利を選ばせてあげてほしいです。婦人科では、早く来てくれたら助けられたのにと思うことが多くあります。お子さんにちゃんと検査に行くように伝えて欲しいですし、皆さんにも思って欲しいです。
また労組の皆さんには生理休暇だけでなく体調が悪ければ休むこと。介護や家庭など様々な事情があり、理由がなくとも休みを取れることが必要だと思っています。(文責・編集部)

女性集会グループワーク
さまざまな年代で活発な意見交換に

集会では「生理休暇について」、「妊娠・出産・子育て」、「更年期・介護について」のテーマでグループワークを行い、各班から報告を頂きました。
生理休暇については、母性保護月間の取り込みで生理休暇の取得人数が増加しているが、人材不足で職場によって取得時の雰囲気が悪かったり、上長から否定されるなどの現状が話されました。また部署によって生理休暇の周知に差があるという意見から、有給休暇とは別であることや、広厚労が翌月に有給休暇を入れ生理日であれば生理休暇に変更するという方法を団体交渉で確認し、組合員へ広めていることが取得に繋がっているということ、病院全体で休暇を取りやすい雰囲気を作ることも大切だと話し合われました。
妊娠・出産・子育てのグループでは、職場で感じる悩みとして人手不足についてや、育児に関する制度が改善され変わって来ているとはいえ、マタニティハラスメントがあること。本人には直接言わないけど「あの子、また休むんだよ」といったことを若い人たちが聞いてしまうと、この病院では子育てしにくいと離職に繋がってしまうこと。職場で「権利ノート」を広め、特に管理者には伝えていきたいといった報告がありました。

認知症支援すごろくに取り組むグループ

更年期・介護についてでは、「認知症・介護すごろく」を使って認知度の程度による支援体制を楽しく学べたこと。介護保険の制度が年々変わってきているので知識をつけていくことや、兄弟間で親がこうなった時どうするかをあらかじめ話し合っておくことが重要など意見が交わされました。
また、更年期症状を薬を飲みながら抑えて働いているという現状があり、女性だけではなく男性も含めて体調不良時に休みが取れ、自分たちが元気で働ける環境を作っていくことが人材確保や離職を防いでいくとにも繋がるといった報告がありました。

全厚労ピースフラッグを囲んで記念撮影