全厚労ニュース速報10月7日秋闘速報No.1
全国キャラバン始まる
北海道庁要請&市長会、町村会との懇談も
北海道市長会・参事と懇談 公立病院の財政難と人材確保へ支援要請
全厚労大栗書記長と富樫中央執行委員(北厚労:中央副執行委員長)(以下、要請団)は2025年10月6日、札幌市内自治会館6階会議室にて北海道市長会の参事と主査2名との懇談を行いまいた。公立病院をめぐる財政難や医療人材の確保難を中心に、地域医療の崩壊リスクについて率直な意見交換をしました。
富樫中執と道庁別館会議室にて
公立病院の厳しい現状について
まず、参事より診療報酬改定が恒常的な財源確保につながっていない実情が指摘されました。公立病院は人事院勧告に準じて給与を引き上げる必要がありますが、診療報酬では十分に賄えず、自治体の一般会計から「10億~20億」規模の繰出金が毎年発生していることを話されました。その結果、地域のまちづくり施策に影響が及び、政策停滞を招いていることなど説明がありました。
さらに、新型コロナ対応で一時的に用いられた病床確保補助金が停止したことも重くのしかかっています。財源の流用余地は今年度で尽きる見通しであり、来年度以降の診療報酬改定内容も不透明なことから、現場には強い危機感があることなどを共有できました。
人材確保の困難と地域偏在について
看護師や薬剤師、コメディカル職種の確保が深刻化している現状も。地方では看護師の新卒採用が「ゼロ」の地域もあり、給与改善なしには人材流出を止められないことや、派遣人材への依存は高コストで、病院経営をさらに圧迫している現状なども話しました。
また、若手看護師の都市部志向や、美容分野など夜勤のない職場への流入が加速しており、地方定着が難しくなっていることや、准看護師養成の縮小もあり、地方の医療提供体制維持に深刻な影響を及ぼしてしていることを話題にしました。
病床削減と地域医療構想の課題について
参事は国が進める「病床数適正化支援事業」の補助金が不足し、機能分化や病床削減のインセンティブが弱い点も問題視されました。維新の会が提案する「11万床減」などの議論に対しては、社会保障費削減一辺倒の政策が地域医療の崩壊を招くとの懸念を表明されていました。
我々としても厚生連病院は、地方や山間地において感染症医療や災害対応、不採算医療を担ってきました。その役割にふさわしい財政的評価と支援が不可欠であることを改めて強調しました。
政策要請と今後の方針について
市長会は今年に入り、すでに厚労省・財務省への要請や与党の医療系部会への働きかけを「3回」実施し、今後も国への緊急要請を継続し、北海道内を6ブロックに分けて厚労省や総務省と協議を進める方針であると話されました。
また、市長会・町村会・医師会などと連携し、地域医療を守るための共同ロビー体制を強化することが確認されました。広島県尾道市や安芸高田市で導入されている看護師育成奨学金制度の事例を参考に、北海道内でも奨学金制度の拡充を進めたいとの希望を聞けました。
さんふらわあ号甲板からのよあけ
地域医療充実への決意
最後に、厚生連をはじめとする地方・中山間地の医療支援に対し、さらなる理解と協力を求める意向が共有されました。公立病院を主軸とした地域医療の充実に向けて、国からの支援拡充を強く要請していくことが確認され、懇談を締めくくりました。
今回、主に懇談した京野参事は以前医療機関で働いていたこともあり、業界に詳しく色々な話題をざっくばらんにお話出来ました。
北海道庁への要請
医療・介護人材確保と報酬改定で協力確認を
同日、要請団は北海道庁別館会議室を訪れ、医療・介護分野の経営環境改善と人材確保に関する要請を行いました。道庁側は分野ごとに6名で対応していただき、内容は診療報酬・介護報酬の引き上げの必要性や、地方における深刻な人材不足の実態についての話題から今後の連携、情報交換したい旨確認しました。
経営環境の悪化と報酬改定の課題について
要請団は、人件費や物価高騰により公定価格で運営される医療・介護事業所の経営が厳しさを増していることに加え、賃上げ(ベースアップ)が実現しても一時金の削減で相殺され、年収ベースでは減少するケースもあり、これが医療従事者の離職や他産業への流出を加速させていると指摘しました。
保険福祉部福祉局、高齢者保健福祉科担当者は介護業界の給与水準は全産業平均より約8万円低く、理学療法士の初任給が一般企業の営業職より6~7万円低い事例も示され、若者の就職抑制要因となっていると訴えました。その上で、診療報酬・介護報酬の双方の引き上げと、物価と連動する仕組みの導入を国に要望していることなど話しがありました。
深刻化する人材不足について
要請団は、地方では医療・介護職員の連休取得が困難なほど人手不足が進んでおり、多くの病院が赤字経営に陥っていると報告しました。募集をかけても人材が集まらず「医療崩壊待ったなし」の地域もあると危機を訴えました。
職種別では、医務薬務課課長から薬剤師が薬局との賃金格差で病院に就職しないこと。看護政策担当課長から看護師は少子化により養成校の学生確保が難しく、道内では廃校も出ていると話されました。医師確保担当課長からは医師は21の二次医療圏のうち11が「医師少数区域」となっており、地域偏在の深刻さが明らかにされました。介護運営担当課長からは介護分野では訪問介護の報酬引き下げが事業所倒産につながっている現状が指摘されていました。
北海道庁の対応と認識について
道側も、医療機関が厳しい環境にあるとの認識を示しています。看護協会と連携した潜在看護師の掘り起こしや、医師派遣補助、ICT導入による職場環境改善支援、介護テクノロジーの導入補助などの取り組みを説明してくれました。しかし根本的な人材不足解消には至っていないとし、課題の大きさを共有しています。
さらに、北海道医師会と連名で国に診療報酬の見直しを要望していること、2025年の「骨太方針」に明記された幅広い職種の賃上げに沿った国の対応を求めていることを話していただきました。
厚生連病院の役割と危機感について
要請団は、厚生連病院が過去に島根・埼玉・栃木で閉鎖に追い込まれている現状に触れ、北海道でも経営難と人材不足で同様の事態が懸念されると強調しました。厚生連病院はコロナ患者の受け入れや災害時のDMAT派遣など、地域医療に不可欠な役割を果たしていることから、国と自治体による強力な支援を求めました。
懇談の最後には、要請団として北海道が具体的な方策で課題解決に取り組んでいることを評価し、現場に持ち帰り共有すると述べました。双方は、住民が住み慣れた地域で安心して医療・介護を受けられる体制づくりのため、今後も協力していくことを確認しました。