全厚労は25年11月4日、25秋闘で取り組んでいる厚労省交渉を中執で行いました。要請書は以下の通りです。
2025年11月4日
厚生労働大臣
福岡 資麿 殿
全国厚生連労働組合連合会
中央執行委員長 岩本 一宏
(公印省略)
要 請 書
日頃の厚生労働行政におけるご尽力に心より敬意を表します。
私たちは、農村・中山間地域、へき地の医療を守り、全国の地域医療を下支えするJA厚生連病院・施設で働く医療・介護労働者です。新興感染症や災害の頻発、 物価・エネルギー高、人材確保難が重なる中、現場は持続可能性の岐路にあります。 とりわけ、医師・看護・介護・リハ・薬剤・検査等の担い手不足は深刻で、処遇と労働 環境の遅れが質と安全を脅かしています。
医療・介護は国民生活のインフラであり、地域を支える基盤です。現場の人員と 基礎的経費を安定的に確保し、恒常的な賃金水準の底上げと「安全に働ける勤務 体制」を制度として担保することを強く求め、下記のとおり要請いたします。
記
1.国費による大幅な賃上げ支援と地域医療の基礎経費補填の強化
(1)
医師・看護職・コメディカル・介護職を含む医療・介護従事者の賃金を、他産業との格差是正を見据えて継続的に底上げできる直接支援を講じること。
(2)
厚生連が担う農村・中山間地・へき地医療の維持のため、人件費に加え、 水光熱費・医薬材料・建設資材・機器更新等の高騰分および仕入税額控除の困難による実質的な消費税負担の増を補う財政支援を強化すること。
(3)賃金や物価水準の変動に対応したインフレスライド制を導入し、医療・介護 施設の安定経営を下支えし、かつ労働者の賃金に反映させる仕組みを構築すること。
2.「ベースアップ評価料」の抜本的改善と恒常化
(1)
申請状況、賃上げ額・率、職種別・規模別の到達状況等のデータを速やかに開示し、達成困難の要因を分析のうえ改善方針を示すこと。
(2)
現行目標では原資が不足しています。物価動向・他産業賃上げ・人材流出入を踏まえ、2026年度以降も継続可能な賃金原資を確保し、必要に応じて年度途中の臨時改定を行うこと。
(3)
患者自己負担を増やさない観点から、ベースアップ評価料を自己負担算定 から除外する仕組みを検討・実施すること。
(4)
対象を「医療機関で働く全職員」に拡大し、同一医療法人内での柔軟活用 (病院・診療所間の弾力運用)を可能にする制度設計とすること。
(5)賃上げは基本給(賃金表改定)を原則とし、少なくとも原資の3分の2以上を 基本給に充当する要件へ改め、手当偏重を是正すること。
3.「看護職員処遇改善評価料」の整理・統合と現場の分断解消
(1)
同評価料をベースアップ評価料に一本化し、職員一人当たりの恒常的な処遇改善額を明確化すること。救急搬送件数等の対象制限は撤廃または大幅 緩和すること。
(2)
対象外部署・施設との不公平を生まないよう、法人内での均衡処遇を可能にする運用通知・財政措置を講ずること。
(3)次回届出期限までに、手当中心の運用から賃金表改定への移行を促す経過措置・支援策を示すこと。
4.医療安全に資する「働き方」改革の実効化(診療報酬での誘導)
(1)労務管理評価料(仮称)を創設し、時間外上限管理、年休取得、勤務間インターバル、夜勤日数管理等、法令遵守と安全配慮の取組を評価対象化する こと。また、夜勤等の基準を診療報酬要件として以下のように明確化すること。
① 夜勤1回は原則8時間以内
② 交替制勤務の時間外上限設定
③ 交替制勤務者の法定週労働時間短縮の方向性明示
④ 夜勤日数の上限(例:月8日以内/2交替は月4回相当、個人上限の明記)
⑤ 勤務間インターバル12時間以上
(2)新興感染症・災害時の即応に備え、平時から余裕のある病床・人員を前提とする収入設計に見直すこと。
(3)看護配置基準を底上げし、実態に即して一般病床の最低基準の見直し(7対1水準の確保)と入院基本料の引上げを行うこと。
(4)診療報酬を簡素化し、加算取得のための新規事務負担の抑制・医事職の 業務量適正化を図ること。看護師がベッドサイドケアに集中できるよう、書類やカンファレンスの要件を整理し、看護補助者・クラーク配置への国費支援を 拡充すること。
(5)「地域医療介護総合確保基金」を病床削減誘導ではなく、余裕病床・余裕人員の確保と老朽更新・耐震化・BCP整備に重点活用すること。
5.薬剤師の確保対策の抜本強化
(1)
病院薬剤師・薬剤部門を所管する専門担当部局を設け、実態に基づく確保策を恒常的に検討・実施すること。
(2)
病院薬剤師の配置基準引上げと、それを支える診療報酬の大幅引上げを行うこと。
(3)病院勤務を条件とした奨学金返済減免・給付型奨学金等の制度を創設し、 地方の公的・公立・厚生連病院への就業を後押しすること。
6.介護分野の処遇と基盤強化
(1)介護職の賃金水準を全産業平均へ引き上げるため、再改定・上積みを行う こと。
(2)深刻な人手不足と物価高騰を踏まえ、訪問介護の基本報酬の見直しは減額回避とし、地域で担い手を維持できる水準へ是正すること。
(3)医療・介護の連携に資する同一法人内の原資の柔軟な運用(施設横断的な 処遇改善の運用)を可能にすること。
7.医療DXと標準化対応への実費支援
電子カルテ標準化、医療情報連携、セキュリティ対策、医療機器のサイバー要件対応など、初期投資と運用費に対する補助・税制支援を拡充し、地域中小病院でも確実に実装できる制度設計とすること。
8.現場実態の共同把握と政策反映
(1)厚労省が医療労働団体・学会・自治体と協働し、夜勤実態・離職要因・事故 要因・ケアの質に関する継続調査を実施し、診療報酬や指針に反映させる こと。
(2)ILO条約の均等原則に則り、中医協の委員に医療・介護系労働者団体から 委員になる機会を与えること。
以上日頃の厚生労働行政におけるご尽力に心より敬意を表します。
以上