現場は限界「スピード感ある対応を」25秋・厚労省交渉で医療・介護労働者の処遇改善訴

医療・介護施設への対応は待ったなし

 11月4日、全厚労は秋闘全国キャラバン前半を終え、中央執行委員会と厚労省交渉を24名の参加で行いました。
 初の女性首相となった高市早苗氏が所信表明演説にて「診療報酬改定を待たずに、経営の改善および従業者の処遇改善につながる補助金を措置する」といった考えを示しましたが、交渉では6月に閣議決定された「骨太の方針2025」以上の考え方は話されませんでした。
 しかし新型コロナウイルス感染症患者の積極的な受入れ対応や、要請行動を重ねたことにより、厚生連が地域医療に貢献していることを厚労省は十分に認識し、医療・介護現場の処遇改善が必要であるとの姿勢が感じられました。
 交渉では他産業の賃上げに追いついていない医療・介護労働者の実情や、光熱費増・物価変動に対応した公定価格(診療報酬)のスライド制の導入を
新たに求めました。
 また病院薬剤師の不足について配置基準の引き上げと、診療報酬の引上げの要求。「ベースアップ評価料」の抜本的改善と恒常化、「看護職員処遇改善評価料」の整理・統合と現場の分断解消、介護分野の処遇と基盤強化等について求めました。

 

要請書を手渡す岩本委員長

労働者の手元に届く政策を
 他産業との賃金格差是正への支援や、スライド制導入の要求に関して厚労省は、「総理の意向を踏まえたうえで、現場で働く幅広い職種に対し処遇改善、経営改善を支援する対策を補正予算に盛り込んでいきたい。骨太の方針2025を踏まえつつ診療報酬改定の内容については中医協で議論していく」とし、具体的な内容や交付時期についての明言はありませんでした。
 岩本執行委員長は、前年度の「生産性向上・職場環境整備等支援事業(許可病床数×4万円)」給付金も届いていない状況や、年末一時金について「経営者からは赤字と言われ、医療従事者が安心して年末年始を過ごせるかは助成金にかかっていると言っても過言ではない。迅速に対応していただきたい」と発言。要請団からも、公的医療機関でもっとも人口密度の低いところを担っている厚生連にとって医業収益での純利益はほぼ無く、自治体からの補助金や特別交付金を貰って運営していること。中山間地の働き手は不足し、来年度の診療報酬改定を待っていては病院・施設の存続ができないと訴えました。
 材料費や光熱費の高騰に対応できる公定価格の要求に対して、厚労省は「物価や賃金の状況のほか、国の財政状況、保険料等もあるので、全く検討していないわけではないが慎重に議論が必要と思っている」と、発言しました。

看護の担い手不足危機感をもって

 現場実態の把握と政策反映の要求では、厚労省へ医療労働団体や学会等と協働し、夜勤実態や離職要因などの調査を実施し、診療報酬に反映させることを求めました。
 厚労省は「ナースセンター登録データに基づき継続的に状況を把握している。医師についても勤務実態の把握調査等を実施している」とし、看護師の離職について「厳しい状況の中で働かれていることは重々承知している。復職支援の実態把握をしながら実際に働く現場の皆さんに丁寧に対応していきたい」と話しました。
 参加者からは、看護師が新しく入ってきてもやめてしまう実態や、看護学校の定員割れや閉校で担い手不足の状況を訴えましたが、担当官は「学生を確保する担当ではないので明確な回答は難しい」としながらも「どのような対策がとれるのか検討をすすめている」と話しました。
 現場と、診療報酬改定を議論する中医協に乖離があることから、最大の医療産別である日本医労連の推薦の機会を求め、医療・介護現場で働いている労働者の意見が出せるよう検討してほしい旨を伝えました。
 岩本委員長は「迅速に対応してくださることが必要。我々と目指す方向は同じだと思っている」と交渉のまとめを行いました。
 全厚労は今後も、国会や関係省庁への要請で政府への働きかけを行っていきます。

地域の実情を伝える参加者