医療現場の深刻な課題について
高知県庁健康政策局へ要請・懇談
高厚労執行部(要請団)と医療従事者確保について

全国キャラバン13県目は、高知県。11月25日大栗陽(全厚労書記長)と由比智一(高厚労執行委員長)、建沼叡秀(高厚労副執行委員長)、西田和真(高厚労副執行委員長)、堀野翔太(高厚労書記長)、谷内知恵子(高厚労専従)(以下、要請団)は、高知県健康政策部へ要請しました。
医療従事者の処遇改善と公的支援に関する要請
要請団からは、医療労働者の賃上げが進んでいない現状について説明し、公的病院の7~8割が赤字経営で、物価高騰分を診療報酬に転嫁できず赤字が拡大しており、病院単独での解決は困難な状況であることを訴えました。加えて、医療機関の人員確保と処遇改善のため、公的支援の強化を要請し、必要な財源確保に県と国が一体で取り組むことを求めました。
県からの回答としては、県も大きな問題と認識しており、特に法定価格(診療報酬)の問題が大きいと指摘した上で、知事会と連携し、物価上昇に連動する仕組みの構築などを国に提言している。補正予算や経済対策での支援も検討し、迅速に医療機関へ届ける方針だと説明しました。
人材不足と流出について
次に要請団は、看護師や放射線技師などが不足し、職員が疲弊。2023年度には新人看護師がゼロという事態も発生している現状を訴えました。若い世代が賃金の高い都市部(特に関西、大阪)へ流出し、看護学校も定員割れの状況であると説明しました。さらに大規模病院への人材集中や、新人の早期離職も課題にしています。
労働環境について
現場では、記録などの事務的作業に時間が割かれ、本来の看護業務(ベッドサイドケア)に集中できないことや、医師の働き方改革に伴い、医師の業務が看護師に移行し、負担が増加していること。看護師は「常に忙しくなければならない」という風潮があり、ゆとりのない労働環境が事故のリスクを高めていることを説明しました。
産婦人科の減少と患者層の変化
県内で産婦人科が減少し、安心して子どもを産める環境が失われつつあることや、高齢化により認知症患者が増加し、現行 の看護師配置基準が実態に合っていない点も説明しました。
医療DXの課題について
要請団からは、政府はDX化による業務効率化を推進しているが、地方病院では導入費用や高額なランニングコストが障壁となっていることや、補助金を活用してもコスト面で導入を断念した事例が報告され、現行の補助金制度では不十分との意見を申しています。
地域医療構想に関する要請について
人口減少だけでなく、医療が地域の社会・生活インフラとして重要である点を考慮し、地域住民や医療従事者の意見を聞きながら構想を進めるよう要請しました。


南国市役所へ訪問
要請団は続いて、南国市役所を訪問し南国市副市長と保健福祉センター所長、長寿支援課課長に対応していただきました。

JA高知病院の課題について
要請団は、南国市の中核病院であるJA高知病院の経営が厳しく、昨年度は新人看護師の採用がゼロという深刻な人手不足に直面している現状と。救急受け入れは年々増加し現場の負担が増大していること。過去には看護師の大量離職で病棟が一時閉鎖されたことについて説明と理解を求めました。高知県東部地区では産科がなくなる可能性があり、出産のための長距離移動が強いられることや、外科医の高齢化も進み、後任がいなければ外科も縮小・廃止の危機にあること。医療機能の中心部への偏在が、地域住民の生活を困難にしていることなど話しました。
人材不足の背景として
賃金と労働条件で他産業と比較して賃金が低く労働条件が厳しいため、人材が流出している。看護学校自体が定員割れしており、看護師のなり手が減少していること。患者の高齢化や認知症患者の増加により、看護師一人当たりの業務負担が増しているが、人員配置基準は旧態依然のままであること。身体拘束に関する規制強化も現場の負担を増やす一因となっている点などを問題にしています。薬剤師も不足しており、賃金の問題で人材確保が困難な状況にあると話しました。
課題解決に向けた提案として、人材確保策は、奨学金制度として一定期間の勤務を条件に返還を免除する奨学金制度を設け、看護師確保につなげる案が議論されました。次に、外国人材の雇用についてですが、看護分野での外国人材雇用も議論されたが、住居費などの付帯費用がかさむため、コスト面で導入に至っていないことなど。その他、地域枠で育成した医学生が県外へ流出するのを防ぐための改善策が必要との意見が出されました。
南国市側からは、コロナ禍でのJA高知病院の多大な協力に感謝が述べられ、病院存続の重要性が強調されました。
県、医療危機に理解 国への要望を継続
大厚労執行部(要請団)と大分県福祉保健部へ要請

全国キャラバン14県目は、大分県。11月27日大栗陽(全厚労書記長)と中野綾(大厚労執行委員長)、中村優(大厚労書記長)、藤田祐大(大厚労書記次長)(以下、要請団)は、大分県福祉保健部へ要請しました。
公的病院の経営と診療報酬改定の要望
県側は公的病院の約7割が赤字との新聞報道を県も認識しており、全国知事会を通じて診療報酬改定を国へ要望しています。直近の経済対策に伴う補正予算の内容を確認し、県で活用可能な施策を検討しています。これからも、国への要望を継続し、補正予算の活用検討を進める方針でいると回答がありました。
要請団からは、賃上げの現状とベースアップ評価料の影響として、ベースアップ評価料が手当支給に留まり、基本給の上昇につながらなかったことや、ボーナス減額により年収が横ばいまたは減少する事例が発生していること。さらに今年度は夏季ボーナスが例年割れ、冬季も厳しい見込みでいることから現場の逼迫状況を行政にも理解してもらう意味で本活動を約40年ぶりに行っていると話しました。以下の課題について懇談しています。
看護師不足と養成支援の課題
- コロナ以降、採用が困難で定員充足できない状況が継続
- 県内の専門学校で定員割れが続き、人材育成が滞る
- 県の看護師向け奨学金制度が長年据え置きで額が不足、物価上昇に対応できていないとの指摘
- 専門学校・大学の学費負担増(例:大学年間147万円×4年、専門学校約90万円、県立は60~80万円)
- 奨学金の増額や返済免除条件(県内就労)などの拡充を要望
現場負担増とケアの質低下の懸念について
- 患者の重症化・認知症増加で目が離せないケースが増加
- 休憩が取れない、看護本来のケアが十分にできないという悩み
- 長く働き続けるための健康維持や労働環境改善を要望
若手看護師の離職・流出要因について
- 夜勤負担と手当が見合わず、生活維持だけの働き方になりがち
- 結婚・出産期を見据え、日勤中心職種へ転換志向が強まる
- 都市部との賃金格差で県外転出が生じている
- 大分県で長く働きたい意向はあるが、賃金・体制の改善が必要
県の賃上げ・補助金情報の共有
※県側から鶴見病院がまだ国の補助制度についてまだ未申請だということで紹介がありました。
- 賃上げに活用可能な補助金あり、申請締切は来月15日
- 病院は病床数×4万円(上限900万円超)で算定、令和8年3月31日までに賃上げ実施で対象
- ICT導入やシフト改善なども取り組み対象
補助金の積極活用を促進し、賃上げ・業務効率化につなげて欲しい旨の説明がありました。
ICT・AI導入による業務効率化の必要性について
- 看護師の事務作業負担が大きく、ベッドサイドのケア時間が削られている
- 導入費用が高く、現在の経営力では導入が困難という声
- 電子カルテ未導入の病院も存在(紙カルテ運用例)
- 国の推進に見合う導入支援の拡充が望まれる
外国人労働者の受け入れ状況(主に介護分野)について
※鶴見病院のある別府市は観光地のため、外国人材の雇用に積極的であり、県側も積極的な姿勢が見えました。
- 介護施設でインドネシア中心に750~760名が就労、年100人程度増加
- 3か年で合計600人増を目標に県施策で推進
- 日本語学校と連携し、資格取得支援・日本語教育を実施
- 在留は最大8年、介護福祉士資格の取得が必須化の見込み
- 地域での孤立防止、定住支援、市町村との連携強化が課題
- 都市部への流出(2年で移動可能)を防ぐ魅力発信・定着施策が必要
医療人材の派遣活用に関する懸念について
- 短期派遣は定着せず、教育の非効率化・重要業務の引き継ぎ困難を招く
- 県は民間派遣には直接関与せず、ナースセンター等を活用
- 長期就労前提の人材確保・育成施策を望む声
県の対応方針
- 経営・人材の厳しさを認識し、全国知事会等を通じた国への要望を継続
- 診療報酬改定や関連施策の実現に向け、現場の声を踏まえ対応を検討
現場意見を受け、国・県施策の重ねた要望と検討を進めたいと回答がありました。


別府市役所メッセージ集約を手渡す
要請団は県に先だち、別府市役所いきいき健幸部健康推進課へ一言メッセージ集約等を手渡しに訪れました。懇談はできませんでしたが、課長補佐兼健康企画係長とわずかの時間でしたが、お話することが出来ました。
看護師不足は県も認識
医療従事者の人材確保と処遇改善の必要性訴え
山厚労執行部(要請団)と山口県健康福祉部へ要請

全国キャラバン15県目は、山口県。11月28日大栗陽(全厚労書記長)と小田一穀(山厚労中央執行委員長)、藤井恭平(山厚労長門支部長)、松野多希子(山厚労長門支部書記長)、成清裕美(山厚労小郡第一支部長)、寺本純子(周東支部長)、藤井英雄(周東支部書記長)、松田純一(中央書記長)(以下、要請団)は、山口県健康福祉部へ要請しました。
表題の医療従事者の人材確保と処遇改善の必要性について、看護師不足は県も認識しており、少子高齢化により医療職を目指す若者が減少していることが根本的課題であると捉えている。
要請団からは、医療従事者の給与は他産業より低く、初任給の差が大きい。夜勤をしてようやく平均的な給与となる現状では魅力が乏しい点を指摘しました。賃金を上げなければ看護師志望者は増えないという現実があり、職員の高齢化が進み、僻地医療では定年前の職員が夜勤を担うなど体制が不安定であるなど、資格取得後も、給与面から病院に就職せず一般企業へ進む人が増加傾向など話題にしました。
県の取り組みと課題について
県側の回答として、診療報酬制度の制約により、県が直接賃金を引き上げるのは困難との見解示しました。
労働環境の改善については、勤務環境改善センターを設置し、コンサルによる助言等で魅力ある職場づくりを支援したいと話がありました。
就職支援として、看護師養成の奨学金制度を実施しており、県内中小病院への就職を促し、一定期間勤務で返済免除する制度を紹介がありました。さらに県内医療機関の魅力発信として、看護学生向けガイダンスを今年から開始し好評であると。要請団からは、奨学金の条件「卒業後数年間を200床以下の病院で勤務」が、成長期に急性期病院経験を得られないのが問題だと指摘しました。
県は勤務環境改善や奨学金などで人材確保を推進しているが、賃金改善への直接介入は困難で、国の対応が不可欠との認識と見解を述べました。
国への要望と県独自支援策の要請について
要請団から国へ診療報酬改定等を強く要望してほしいとの意見が繰り返し要望されましたが、全国知事会等を通じた働きかけ継続の回答でした。また、県独自支援として「看護師一人当たり1万円補助」案が提案されたが、県単独での実施は難しいとの見解でした。さらに、赤字病院補填として、特別交付税など一般財源を僻地のみならず県内全体の赤字病院へ重点配分してほしいとの要望も行っています。山口県の強みを活かし、医療分野からの若者流出を防ぎ地域活性化につながる政策的投資を求める声が上がりました。

地域医療の課題と将来について
要請団は県庁を後にし、山口県市町総合事務局に向かい事務局長と事務局次長と懇談しました。

要請団は、県庁を後にして山口県市町総合事務局へ訪れ、事務局長と事務局次長と懇談を行いました。懇談内容は、地域の医療従事者たちが、スタッフ不足、高齢化、過酷な労働条件、低いモチベーションといった深刻な課題に直面している現状を伝え、特に地方の周産期医療や救急医療の維持が困難になっており、このままでは数年後に病院機能が縮小し、地域医療が崩壊する可能性があるという強い危機感を表明しました。
現場の声として、各支部の声を届けてもらいました。
50代の市民として、地域の医療体制の将来に強い不安を感じている。税金を納めているにもかかわらず、適切な医療が受けられない現状に疑問を呈し、特に産科医療の不足を指摘し。自身が高齢になった時に誰が面倒を見てくれるのかという不安から、今行動を起こす必要性を訴えました。
長門市立病院の外来看護師。スタッフ不足の中で多くの診療科を維持する現場の限界を詳述し、特に周産期医療では、少ない助産師で安全性を確保することへの精神的負担が大きいと語りました。他の職種に比べて給与が見合わず、やりがいだけでは続けられない現状や、若手が定着しないことへの無力感を表明し、5~10年後には病院機能が縮小する事態も起こり得ると警鐘を鳴らしました。
柳井市の周東総合病院に勤務していますが、自身の病院がある医療圏も消滅可能性自治体に囲まれており、患者と看護師の高齢化が同時に進行していると指摘し、若い看護師がUターン・Iターンで定着しないため、募集をかけても人材が集まらないという課題を共有し、行政との連携強化を求めました。


※要請後は県庁前からゼッケンアピールを藤井恭平長門支部長と行いました。寺本周東支部長も撮影のため軽キャンピングカーで追走してくれました。ありがとうございました!(山口ナンバーはレンタバイクです)
次回、全厚労ニュース速報No11は広島頂上作戦編(仮題)を予定しています。