経営が悪いと労働条件が悪くなるのは仕方ないのでしょうか?

そんなことはありません!

労働者の労働条件に関わる法律上の基本原則として、効力の強い順から
日本国憲法(第27条、28条・労働基本権)
 ↓
法律(労働基準法、労働安全衛生法、労働組合法など)
 ↓
労働協約(使用者と労働組合との合意文書)
 ↓
就業規則(事業所毎に策定される職場のルール)
 ↓
労働契約(個々の労働者が行う使用者との契約)
 ↓
業務命令(日々、上司より出される業務指示など)
となっています。
ですから、個々の労働者が使用者と合意して、就業規則より低い労働条件で労働契約を行ったとしても、その部分は無効になります。事業所毎に作成されている「就業規則」が、労働条件のベースになりますので、一人ひとりの労働者がしっかりとその中身を知ることがまずは大切です。

労働契約の基本原則 労働契約の締結や変更は、以下の原則に基づいて行うことが必要です(労働契約法第3条)
(1)労使の対等の立場によること
(2)就業の実態に応じて、均衡を考慮すること
(3)仕事と生活の調和に配慮すること
(4)信義に従い誠実に行動しなければならず、権利を濫用してはならないこと

不利益変更の禁止原則
○労働基準法第1条の2 「・・(中略)・・労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない」とされており、労働条件の「不利益変更」は、労働基準法に関して「違法」ということになります。

労働条件を変更するには
1.就業規則の変更によらず、労働条件を勝手に不利益とするのはもちろん違法です。
2.就業規則を変更しても、使用者が一方的に「不利益変更」することはできません(労働契約法第9条)。
3.労働条件を変更する場合には、就業規則の変更、もしくは労使協定(労働協約の場合は、原則、組合員にのみ適用)が必要になります。
4.労働条件を「不利益変更」する場合には、変更するための「合理性」が求められます。少なくとも労働条件変更の「合理性」の視点としては、次のことが必要です(労働契約法第10条)

① その変更が、以下の事情などに照らして合理的であること。
 ・労働者の受ける不利益の程度
 ・労働条件の変更の必要性
 ・変更後の就業規則の内容の相当性
 ・労働組合等との交渉の状況
② 労働者に変更後の就業規則を周知させること。
 まず、そもそも労働条件を不利益変更しなければならない必要性があるのかどうか、使用者が具体的な情報や根拠を提示して説明する必要があり、条件変更によって労働者が受ける不利益の妥当性や許容性も検討されなければなりません。
 これら全てに合理的な根拠が必要であり、労働組合との丁寧かつ十分な協議を行い、納得できる状況までにあることがベストです。また労働者への周知を進めることは当然、使用者の責任になります。
 また就業規則の変更届け出には、過半数労働組合か、それがなければ労働者の過半数代表の意見書添付が必要です。反対意見があっても変更なく届け出ることは可能ですが、労働契約法10条の手続きを充たしているかは問題となりますので、納得できるまで労働組合での交渉を行い、安易な合意をしないことが大切です。

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