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◆ 2021.02.16

パート有期法で手当広げて


  2月5日に開催した第3回中央執行委員会では、労働組合やハラスメントに関する事件を多く担当し、また「明日の自由を守る若手弁護士の会(あすわか)」で憲法カフェ講師や、YouTubeでのケンポ―漫才「四谷姉妹」などでも活動されている青龍美和子弁護士にお越し頂き「正規・非正規労働者の処遇格差是正に労働組合が取り組むべきこと」について、学習講演をして頂きました。(以下講演より)

改正のポイント
  2018年の「働き方改革」で、パート労働法と労働契約法20条が「パートタイム・有期雇用労働法」となりました(以下パート有期法)。
パート有期法では「不合理な待遇や差別的取扱いの禁止」、正規労働者の賃金が分からない状態では不合理な相違が分からず是正されないことから「使用者の説明義務」が新たに加わりました。また紛争解決の促進のため、労働局でのあっせんや助言指導などが有期雇用者にも適用されるようになりました。パート有期法は2020年4月から施行され、今年の4月からは中小企業にも適用されていきます。

手当の面で大きく前進
 最高裁判決では地下鉄売店「メトロコマース」での退職金や、大阪医科薬科大学でのアルバイト職員への賞与の支給が否定されていますが、日本郵便事件では契約社員に支給されていなかった住居手当や扶養手当等がそれぞれの目的や支給要件と照らし合わせ契約社員に支給されないのは不合理と判断され、大きな前進となっています。また井関農機事件では、無期雇用転換後にも手当に不合理な差があれば是正されなければならないことが最高裁で判決されました。手当のそれぞれの金額は少ないですが、格差が是正されれば数千円~数万円のベースアップと同様の効果となります。

勝ち取った判例を武器に
 大阪医科薬科大学事件の原告は、メトロコマース事件や日本郵便事件の報道を見たことがきっかけで提訴を決意し、賞与支給は認められなかったものの夏期特別休暇を勝ち取ることができました。
 非正規雇用労働者が裁判でたたかうことで、報道をみた人が「自分にも当てはまるのではないか」と声を上げること、あきらめずにたたかうことが重要です。また団体交渉だけで成果をあげている例もあり、全労災(全国労災病院労働組合)では、団体交渉で日本郵便の判決を武器に要求し、多くの手当を勝ち取ることができました。
 取り組みを進めるためには裁判例やパート有期法の学習で自信をもつこと。また、使用者への説明義務を活用し、格差を把握しましょう。
説明を求める際には、民法協が作成した要求書(配布・公開http://www.minpokyo.org/information/2020/08/6859/)なども参考に、具体的に聞くことが大切です。また厚労省が作成したパート有期法のガイドラインの具体例に記載されていないことでも、裁判例を参考にして格差の是正を求めることができます。

労働組合で待遇改善を広げよう
 パート有期法の対応で、労使の合意なく正社員の待遇を引き下げることは望ましい対応とはいえません。原資が増やせないからといって正社員の手当を廃止するといったことに労働組合が簡単に同意してはならず、会社側も安易に待遇を引き下げてはならないとガイドラインにも記載されています。
 労働組合で取り組みをすすめるには、把握した格差を職場で周知し、アンケートや対話をつかって非正規職員を含めた労働組合の組織化で要求につなげていくこと。団体交渉でどうしても解決できない場合は、裁判や労働委員会で調停してもいいと思います。成果は共有し交流することで他の組合でも取り組みを進めていってほしいです。




     
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