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◆ 2021.06.17

1年半ぶりに厚労省交渉(オンライン)を開催


診療報酬引上げ、労働条件規制を求める

 6月11日、全厚労は厚労省交渉をオンライン併用で実施。コロナ禍で疲弊している医療機関・医療従事者等に対しての財政支援や来年度の診療報酬改定に向けて、報酬引き上げや労働条件改善に繋がる制度への見直しを求めて、財政面に絞った要求としました。
 一つ目の要求である「財政支援」について、厚労省は、「コロナ対策や地域の医療提供体制を維持するための財政的支援は重要なこと。総額約4・6兆円を措置し、感染拡大防止策の経費、診療報酬の引き上げ等に取り組んできた。医療機関の経営状況、感染者の状況を踏まえつつ、必要な支援について検討していきたい」と回答しました。
 また国の基準としてのコロナ「特別手当」創設については、「基本的には給与や支給条件は各医療機関の経営判断、労使関係で決定してもらうものである。ただ従事者への処遇で、診療体制に影響が生じないようにすることは重要であり、医療従事者の処遇改善等に活用できる補助金を活用してもらいたい」と回答しました。

処遇確保し、離職させない対策・支援を
 全厚労からは、「財政支援の予算には感謝しているが、一方で医業収入が下がっているために、本来の一時金が下げられている。特別手当も全国で同じように患者対応しているのに、もらえるものが違うという不満がある。今年度も補助金交付は想定されるが、年度末決算が出るまでまって欲しいという経営が多い。夏の一時金が下がってしまえば、昨年と同じように離職が出てしまうのは必至だ」と訴えました。
 さらに岩本委員長は「支援金で黒字になっている病院でさえ、コロナ収束後に患者が戻ってくるのか、不安心理が働いている。しっかりと人に配分されるような仕組みを作って欲しい」と話しました。
 「慰労金」の継続支給について、岐阜の西田さんは、「昨年の慰労金には感謝している。自己犠牲で従事してきた者のモチベーション維持に役立った。現在でも勤務調整や外出自粛が余儀なくされ、心身ともに疲弊している。夏が近づき、非常に暑くて脱水症状にもなる。もうひと頑張りできるような慰労金支給を行って欲しい」と訴えました。
 厚労省は、「昨年の慰労金については、コロナへの知見が全くない中で、最前線で頑張っておられる方々へのためのもので、今後、全く同じ形での慰労金は想定していない」、「処遇への支援については昨年末から始めた緊急包括支援金を活用して欲しい」と回答しました。

ベッド減らしより、余裕ある人員体制を
 地域医療構想でベッド減らしを進めている問題で、厚労省は、「地域医療介護総合確保基金は、将来の医療需要に見合った対策への費用であり、病床削減を推進するものではなく、自主的に減らして頂いた病床数や統合などで減った病床に応じて支援をするもの」と説明しました。
 徳島の大栗さんは、阿南共栄病院と阿南医師会病院との統合の実態について、「統合は当初の想定とは違った方向になった。2つの病院のカラーが違っていたこともあり、医師の離脱が起こり、医師不足解消にはならなかった。統廃合ありきでは、瞬く間に医療逼迫が起きる。地域医療構想は慎重にしてもらいたい。このまま行けば大変なことになってしまうと感じている」と訴えました。
 高知の由比さんも「災害時や感染症が広がったときには、公的病院が担っている。1年以上もそういう状況で、県や国が支援してくれないと病院も医療従事者も疲弊してしまい、体力がない状況になっている。公的病院を無くしたり、縮小させていくメリットはない」と話しました。

世界的に遅れた「適正?」な基準引き上げを
 その後、大きな2つ目の柱である「診療報酬」の引き上げと制度改善の要求についてやりとりを行いました。
 今後の新興感染症発生時への対応について、厚労省は「医療提供体制については、感染拡大時にも機動的に講じられるように、『医療計画』の中に、感染症対策を入れる医療法改正が行われたところ。病床過剰地域であっても、臨時の医療施設配備など迅速に整備できるようにしていく」としました。
 また人員配置基準の引き上げや、重症度、医療・看護必要度の改善、委員会・研修の診療報酬算定、認知症対応への加算などについて、厚労省は、現行制度の説明とともに、「皆さん方の意見を踏まえて、『適正』な配置・基準となるように中医協で議論していきたい」などと従来通りの回答に留まりました。
 全厚労からは、「いつも『適正』な水準という説明をなされるが、日本の人員配置は世界的に見ても遅れている。私たちは7対1基準が最低のベースラインだと訴えてきたが、厚労省はどのように考えているのか」と問い質しましたが、厚労省からの明確な答えは示されませんでした。

労働条件改善を診療報酬で保障して
 労働条件を診療報酬で規制するという要求については、「看護職の負担軽減が重要な課題であることは認識している。まずは使用者の労働時間管理、適切な勤務・雇用計画で実現されるもの。診療報酬では、夜間の負担軽減に資する評価や増点を行ったところ。夜勤上限を64時間にすることについては、看護職の確保や地域の状況を見て検討したい」としました。
 秋田の中村さんは、「地域の実情ということで、病院任せになっている。夜勤72時間ルールが足枷になって看護師が疲弊している状態で、上限規制をかけないと9回がベースラインになってしまう。人が増えないし、いる人間で回していこうということになる。68時間でも良いので、一歩でも前進を」と訴えました。
 大分の中野さんからは、「オペ室勤務で夜勤はしていないが、インターバルの重要性について訴えたい。朝からずっと手術、分刻みのスケジュールで休憩も取れない。立ちっぱなしで疲れて、夜中まで働いて、朝一番の手術に立つこともある。看護師に憧れてなったが、働けなくなる、身体を壊すのではないかとの不安を持ちながら働いている」と話しました。
 福島の斎藤さんも「長時間労働でメンタル障害を持つ人が増えている。厚労省の皆さんも長時間労働をしていると思うので、身体に気をつけて、対策を考えて欲しい」と訴えました。
 最後に岩本委員長から、「厚労省も激務で頑張っていることを知っている。現場も疲弊している。意見を受け止めてもらいたい」として交渉を終えました。



添付ファイル 21春・厚労省要求書(提出版).pdf



     
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