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◆ 2021.08.20

労働基準法Q&A・詳細解説⑥ 退職時に年休消化はできないの?


Q.今度、職場を退職することになりました。在職中、なかなか取れなかった年休ですが、どうなるのでしょうか?

A.年休(年次有給休暇)取得の権利は、使用者による「時季変更権」を行使しない限り、妨げることはできませんが、退職時の年休には、事実上、時季変更権は使えないため、取得を希望する年休を取らせないということは法違反になります。

――但し、現実的には人手が足りず、容易に年休が消化できない実態にあるのが、医療職場ではないでしょうか。年休本来の目的は「労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図ること」です。退職間際まで長期の年休を残しておくような職場にしないことが必要です。使用者が認めれば、退職時の年休買上げも差し支えないとされていますが、引き継ぎ等の仕事を強要した上で、年休買上げするやり方は法違反と見なされます。
 詳細説明は、以下の通りです。

 年次有給休暇制度の主な目的は、先の説明に上げた通りで、そのため諸外国では、最低2週間程度の連休で取得することが通常となっていますが、日本の場合には戦後、年休制度が労基法に盛り込まれた際に、連休取得が厳しい実態に鑑み、1日単位での取得が原則とされたと言われています。
 日本の年休取得が進まない中で、半日年休や時間年休を導入可能としたり、労働者個々人(管理者等含め)が少なくとも年5日取得することが義務付けされたことは、ご承知かと思います。
 こういう風になかなか取得できていない日本の年次有給休暇制度ですが、年休取得の時季や利用目的などについて、法的な制限は設けられていません。つまり、一旦、労働者に付与された年休を、どんな目的で、どのような時季に取得しようとも、それは労働者の自由とされています。
 一旦、退職してしまうと、もちろん年休の請求権は消滅してしまいますが、労働者が在籍している限り、年休取得の請求はできます。これに対し、使用者は請求された時季に休暇を与えることが、「事業の正常な運営を妨げる」場合に限って、年休を拒否することができますが、退職日以降に時季変更することは出来ません(昭和49.1.11 基収5554号)ので、年休取得は認めざるを得ません。
 なお年休の買い上げについては、通常の場合でも、法定日数を上回って与えられる年次有給休暇日数部分には、買い上げをしても法違反とはなりません。また退職時に残された年休については、消滅してしまう権利を金銭的に補償するということであれば、差し支えないものとされています。しかし、仕事が立て込んでいるからということで残務整理や引き継ぎを行わせて、交換条件として年休を買い上げるというやり方を取ることは法違反と見なされます。
 いずれにしても、法律上の定めがないため、就業規則で一定の定めをするとか、労使で「退職時に限って」一定の定めを結ぶとかのことがない限り、経営者の判断になってしまいます。労働組合としては、年休取得の抑制に繋がらないような形で、退職時に残った年休の処理について、労働者の不利益にならないように、取り決めをしていくことが求められると思います。また年休の「完全消化」を進めること、それに見合う人員体制を要求して実現していくことが大切です。

 


     
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