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写真上) 前半のシンポジウム。司会は普段は外科医の本田宏さん(左奥)、中)介護事情が見えるとヘルプマン8巻を紹介する色平さん、下)会場からも活発な発言が出ました
◆ 2013.06.19

ドクターズ・デモンストレーション2013


地域で生き暮していくために重要な課題に関心の目を向けよう

5月26日、東京・星陵会館にて「ドクターズ・デモンストレーション2013シンポジウム」が行なわれ、医師・看護師ら医療従事者300人が集まりました。第一部では各医療・福祉分野のパネリストによるシンポジウム、第2部として各政党の国会議員から医療制度に関わる政策を聞きました。

宇都宮健児さん(弁護士・前日弁連会長)
「広がる貧困の現状と対策について」
生活保護受給の増加は日本において貧困と格差が拡大している結果であり、国が取り組むべきは保護基準の引き下げではなく、非正規の増加や働く貧困層など格差の拡大をストップさせる政策こそ必要です。生活保護は憲法25条の生存権保障を具体化したものであるにもかかわらず、日本の利用率1.6%は諸外国の5~10%に比べて圧倒的に低すぎます。学校教育において生活保護の権利と申請権の行使を具体的に教えるべきです。

井上博之さん(歯科医師・宮城保険医協会副会長)
「歯科分野から医療・福祉政策を問う」
組合健保・協会健保の医療費免除が打ち切られた12年11月~翌2月に行なった被災者アンケートでは自分の受診を我慢して子どものみ受診させた、受診を控えるようになったという回答が寄せられました。医療費の窓口負担免除は当初『徴収猶予』であったために「後で請求される」とためらって活用されませんでした。2013年4月には全ての免除が打ち切りとなり、診療件数が震災前より落ち込んでいます。歯科は経済的な理由で受診中止が起こりやすく、受診抑制を防ぐためにも窓口負担の軽減と保険給付の範囲拡大が必要です。

中川俊男さん(医師・日本医師会副会長)
「日本医師会のTPPへのスタンス」
国民皆保険を守るには公的な給付の範囲を守り、混合診療を導入させないこと、株式会社の医療参入を阻止する事が必要です。これまでアメリカが日本に医療市場の開放を一貫して迫ってきており、混合診療が解禁されると新しい治療法などが保険外診療として保険扱いにならなくなり、将来的には保険適用の範囲が狭くなることになります。保険外併用療養については小泉内閣時代に評価療養という制度ができ、先進医療の安全性と有効性が確認された場合に限り行なっていますがTPPによって保険収載が阻まれる恐れがあります。

色平哲郎さん(医師・佐久総合病院)
2011年に混合診療の禁止は適法と最高裁判決が下されている。2012年5月に内閣府政務官(民主党政権時)に指摘したが自民党政権は認識しているか確認していきたいと思っています。TPPは良いとも悪いとも言えないくらい全く知らされていない状態。TPPは「とんでもないペテンのプログラム」、ISD条項は「インチキ訴訟で大損害」と訳して紹介しています。アメリカでは大統領に貿易協定を締結する権限はなく、議会が持っています。日本がいくらオバマ大統領(アメリカ通商代表部:USTR)に約束させても米国議会を説得できなければ法律上無効です。一方で安倍首相がオバマ大統領に約束したことは有効になります。

後半はパネリストから聞きたい点を要望した上で、国会議員から政党の政策をお話頂きました。全ての政党に開催の案内を送付し、6政党から参加がありました。

自由民主党・三ツ林裕己さん(衆議院議員) 
自民党としては「額に汗して働いた人が報われる社会」を目指しており、世界に誇る制度である国民皆保険を自助・共助・公助で支えている。どこでもだれでも受けられるこの制度を守っていくためには消費税5%では維持できない。TPPに入れば公的薬価制度が訴えられて崩され、薬価が高くなる恐れがある。注視して見極めていきたい。

民主党・柚木道義さん(衆議院議員) 
与党時代、それまでマイナス改定続きであった診療報酬を微々たるものとはいえプラスに変えることができた。自己責任を前提に、努力したくてもできない人は共助、公助で支えあいの強化が必要。ハード面として在宅を強制するものではなく選択できる制度として受け皿整備を都道府県中心に進めていく、マンパワー面では現場での厳しい実態を踏まえ救急を重点に、他の分野も改善を進める。個々の処遇改善・事業所単位での改善を進めるために党派を超えて議員立法を準備している。

みんなの党・柿沢未途さん(衆議院議員)
社会保障関係費として23兆円(国家支出の54%)が公費から拠出されている。国民皆保険を維持するために徴税の強化が必要だ。厚生年金など保険料を納めていない法人が多く、取りはぐれは脱税と同じ。医療保険は保険一元化・保険料率統一をはかって公平性を担保していく。不採算部門を担っているとしても一部の病院が優遇されるのではなく平等の条件で競争すべきだ。

日本維新の会・今村洋史さん(衆議院議員)
生活保護の不正受給は法的に問題がなくても倫理観の問題だからこそ騒がれた。日本人らしさを忘れてはいけない。TPPは『開国』ではなく『敗戦』だ。日本が自立していくためにも食糧主権、エネルギーの自給を維持しなければならないのにTPPはそれを壊してしまう。個人的意見として日本らしさを守るために反対している。(党としてはTPP賛成)

日本共産党・田村智子さん(参議院議員) 
国は患者負担が重すぎて医療に掛かれない人がいるなかで、消費税を上げても負担を下げると言わない。患者負担の引き下げを目指しつつ低所得者の向けの減免を広げること、国保財源に対する国の負担割合を引き上げて保険料を軽減する事が必要です。基幹税である所得税・法人税の落ち込みにメスを入れることこそ社会保障財源を確保する手だてです。

生活の党・小宮山泰子さん(衆議院議員) 
今日本は企業優先、営利優先で進んでしまっている。株主のためではなく人のための政策、国民の生活が第一の政策にシフトしていかなければならない。母子家庭、高齢者の世帯は年金の減額、消費税増税で大きな負担増になってしまう。消費税増税を止めることが景気対策につながる。

最後に代表世話人の住江憲勇さんは「政府は地域で生き、暮していく社会の土台を崩すような政策を行なってきています。各政党には消費税増税や社会保障改革など重要な課題を隠すことなく、次の参議院選挙でキッチリ訴えて頂くことを切に望みます。国民の側もひとつひとつの課題について関心の目を向けていくことが大切です」とあいさつされました。




     
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